ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 月と復讐とチャットルーム ( No.42 )
日時: 2011/12/25 10:29
名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)

6.

秋子は娘の紗江の住むマンションにたどりついた。この日に限って、電車が遅れてしまった。秋子は紗江に会いたくてたまらなかった。

階段を上って行くうち、胸がわくわくしてくる。どんなことを話そう。
何しろ、娘に会うのは久しぶりなのだ。

一回分を登りきり、マンションの2階に到着する。部屋番号を見て…

「あ、ここね。」

207号室。紗江の住む部屋だ。

と、そこで秋子は異変に気付いた。

やけにひっそりとしている。207号室から、人の気配がしないのだ。そして、どこかでかいだような異臭がする。そう、あれは、小学校の頃…。

「鉄棒の後の…」

手のにおいだ。

秋子は真っ青になって、ドアを叩く。すると、ドアは簡単に開き、視界に血まみれの紗江が飛び込んできた。

「紗江っ…!?」

秋子は部屋に飛び込み、紗江に駆け寄った。必死に揺さぶるが、紗江は恐ろしい形相のまま動かない。ただ秋子の揺さぶるがままに、頭をがくんがくんと揺らし、そのたびに喉から血を流すだけだった。

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朋崎は頭を抱えた。次の文字は「V」だと思っていた。が、現場に書かれていたのは「F」だった。

「R」「E」「F」

今度の犯人は、10年前をまねしているのは確かだ。が、メッセージを「REVENGE」にするつもりはないらしい。いったい何にする気なのか…。

「大丈夫ですか、朋崎さん。」

滝が入ってきた。朋崎は現場の写真から顔をあげた。

「どう思う?」

その言葉だけで、滝はわかったらしい。彼は考えこむような顔をした。

「わかりません。ただ、メッセージを別のものにするのは確かでしょう。たぶん、犯人は「復讐」をしたいんだとは思いますが、何かほかにも意図があるんじゃないですか?」

「…まあ、今の時点では断言はできないな。だが…。」

「もし犯人が10年前と同じく、7文字のメッセージを用意しているのだとしたら、あと4人殺されます。確実に。もうこれ以上犠牲者を出すわけには…。」

「犯人の証拠がつかめないんだ!!まったく、あの野郎…。」

朋崎はいらいらして、椅子にどすんと腰を下ろした。その時だった。

「…朋崎さん、容疑者なら、割り出せます。」

滝はそう言って、ある書類を差し出した。

「僕が言いたかった本題は、これなんです。」