ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 月と復讐とチャットルーム ( No.47 )
日時: 2012/01/06 10:33
名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)

3.朝乃と真夜

望美と別れてから、朝乃はまっすぐ家に向かった。

T大学駅に着くと、見覚えのある男が目に入った。

「…真夜〜!!」

呼ばれると、真夜はびくっとしてから、振り向いた。

「…朝乃か。びっくりした。」

「まったく臆病者だな〜。」

真夜に駆け寄る。20年間、一緒に過ごしてきた幼馴染。

「あれ、今日は望美ちゃんは一緒じゃないの?」

「うん。用事があるんだって。そういや望美、最近用事が多いね。どうしたんだろ。」

「うん…そうだね。」

朝乃は真夜の反応を見て、ちょっと不満そうな顔になった。

「ちょっと、友達のことなんだからもう少し真面目に考えるそぶりでも見せたらどうなのよ〜。」

「いや、じゃなくてさ、最近望美ちゃんが、少しおかしいと思って。」

「は?おかしい?」

「うん、なんていうか…その、暗くなったというか…。あれ、違う。ええっと…。」

「望美はもとからおとなしいから、暗く見えちゃうだけでしょ。真夜のほうがよっぽど暗いわよ。」

「わ、ひどいね。」

朝乃はくすくすと笑う。それにしても、真夜は何を言っているんだろう。望美が変わった?どこも変わってはいない。どこも、…どこも?

その時、朝乃の頭に何かがひっかかった。あれ?私、何を気にしているんだろう。何がひっかかったんだろう?

「…朝乃?どうかした?」

「…え?あ、なんでもない。まったく、真夜、何言ってるの?ちょっと神経質すぎだってば。」

そうだ。何も変わっていない。もう、真夜の神経質さがうつっちゃったのかな?ヤダヤダ。

「さ、帰ろう。ちょうど一人でさびしかったんだ〜」

「朝乃は1人でも平気だったはずだよね?」

「うるさいな。どうせ最寄駅一緒だし、いいじゃん。」

朝乃はそう言ってプラットホームに降りる。真夜もその後ろから結局着いてきた。

ホームに降りて、向かい側のホームを見ながら電車を待つ。ちょうど、向かい側のホームの電車が発車した。

見知らぬ人たちの乗る電車のなかに、知っている誰かがのっていたような、気がした…。