ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 月と復讐とチャットルーム ( No.50 )
日時: 2012/01/08 10:10
名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)

4.

原谷 和也はぶらぶらと通りを歩いていた。

今年で27歳。まだ独身。仕事疲れで、原谷はため息をついた。

「そういや…今日だっけ。」

今日、11月13日。それは原谷の弟、麗音の誕生日だった。

だが、もう誕生日を祝うことはできない。麗音は亡くなった。10年前、HACの飛行機事故で。

そのころ、麗音は14歳、原谷は17歳だった。麗音の中学では希望者が夏休みに外国でホームステイができ、麗音はそれに行く最中だった。

原谷は一気に暗い気分になり、ため息をつく。暗い気持ちを振り払うように首を横に振ると、原谷は駅に向かった。

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KU駅で降りると、原谷は家に向かって歩き出した。

帰路の途中には、大きな本屋がある。この本屋は、珍しいことに英語で書かれた本が置いてある。麗音は英語好きで、英語で書かれた本もよく読んでいた。いつか、ハリー・ポッターを英語で読んでやる、と意気込んでいた…。

原谷はまた首を振る。ああ、もう。どうしたんだ、俺は。

本屋を通り過ぎる。そして数歩いったところで、原谷は立ち止まった。

「…。」

無言のまま、本屋に戻り、洋書コーナーへ行く。そいてハリー・ポッターの英語版を取り上げると、それを買った。

明日、実家に送ろう。そして麗音の仏壇に供えてもらおう。

原谷はすこし明るい気分になった。よし、そうしよう。

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家に帰って、明かりをつける。誰もいない小さな一戸建て。原谷はまあ有名な企業で、それなりの役職に着いていたので、普通のサラリーマンよりは贅沢ができた。

本をテーブルに置き、スーパーで買ってきた弁当を広げた時、ふいに何かが原谷の頭にひっかかった。

「…!!鍵…。」

鍵を、ちゃんと閉めただろうか。覚えていない。確認してみよう。

玄関に戻り、ドアを確認する。その時。

「っ!?ぐうううううっ…」

背中に、何かが突き刺さった。