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Re: 月と復讐とチャットルーム ( No.55 )
日時: 2012/01/24 11:23
名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)

第六章 

1.

FULLMOON>どういうこと?


チャットルームで、望美は朔矢に聞いた。


NEWMOON>さあ、どういうことだろうね。


また、このフレーズだ。望美は少しいらついた。なぜ、朔矢はいろいろなことを秘密にしたがるのか。


FULLMOON>知り合いなの?「内海 香織」と。

NEWMOON>そんなこと、どうだっていいじゃないか。大事なのは復讐を続けることだよ。

FULLMOON>でも、知り合いなんじゃないの?じゃなきゃ、「今回は簡単だな」なんていうわけないでしょ?

NEWMOON>はあ…じゃ、言うよ。内海 香織は同じ大学出身で、サークルでちょっと仲が良かっただけだよ。だから呼び出そうと思えばいつでも呼び出せるだけ。

FULLMOON>へえ…。


望美は納得した。

…この時、納得したのが、いけなかった。

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朔矢はチャットルームから退室して、ふっとため息をついた。

望美は、大切な妹だ。自分のたった一人の肉親だ。

だからこそ、きっと一番の理解者なんだ。

だからこそ、協力してもらわなくちゃならないんだ。

10年前の復讐に、自分だけじゃなくて、望美も加えなくちゃいけないんだ。

歪んだ思想に身を任せ、朔矢はこの数カ月を生活してきた。

望美に協力してもらう以上、自分がちゃんと先走ってやらなくちゃいけないんだ。

この思想が歪んでいることすら、朔矢は気付かない。

すでに、2人を手にかけた、殺人者の、朔矢には…。

朔矢はふう、とため息をつくと、部屋を見回した。

パソコンの隣に、写真立てがある。

そこには朔矢と、綺麗な女性が笑顔でうつっていた。

写真立てからその写真を取り上げ、朔矢は。


ビリッ…


シャープな音をたて、引き裂いた。