ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 月と復讐とチャットルーム ( No.57 )
日時: 2012/01/29 13:56
名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)

2.

「あ…」

朝乃は望美を見ると、駆け出した。

「望美〜っ!!」

叫ぶと、望美ははっとしたように振り返る。そして、笑顔を見せた。

「朝乃か。びっくりしたあ。」

望美はそう言いながら、さりげなく鞄にのばしていた手をひっこめる。その動作に、朝乃は気付かない。

「ハロ〜!!今日、あの人の授業でしょ?」

「そうそう。やだね〜。」

あの人というのは、嫌な教授だ。望美も朝乃も嫌っている。

「仕方ないか…行こう。」

「うん。」

朝乃は先に立って歩き出した。気は進まないけれど。

「…何よ。もう。」

ふいに、望美が後ろでつぶやくのが聞こえた。

(あの人のことかな?)

朝乃はそう思っただけだった。

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とあるカフェで、一人の女性が紅茶とお菓子を食べていた。

歳は23くらい。綺麗な黒髪。白いセーターを着ている。それは彼女に、とてもよく似合っていた。

紅茶を一口飲んで、彼女は手帳を広げる。12月のカレンダーに、いろいろと書き込みがしてあった。

その中でも、ピンクの細ペンで書かれた文字がひときわ目立つ。12/14。「デート」。

女性はやんわりとほほ笑んだ。あと2日。楽しみ。

その時、彼女の携帯電話が鳴った。彼からだ。

「はい。香織です。…うん。」

セーターよりも綺麗な、パールホワイトの携帯電話を耳に押し当て、女性は相槌を打つ。

「うん。そう。…わかった。10時ね…了解。…えっ?」

女性はふいに、驚いた。

「え…あ、なんだ。変なこと言わないでよ〜。」

また笑顔に戻り、会話を続ける。

「そういうことね。何しに行くのかと思った。うれしい。ありがとう。…うん。じゃあね。また。」

ピッ…。

女性はうれしそうに携帯をしまうと、手帳にまた何かを書きこんだ。

そして、カフェを出た。胸を躍らせながら。