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Re: 月と復讐とチャットルーム ( No.63 )
日時: 2012/02/10 10:11
名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)

第七章 朋崎と滝と朔矢と望美

1.朋崎と滝と朔矢と望美

全ての処理を終え、朔矢と望美は帰路についていた。

電車は空いていた。空いている席に並んで座り、ぼんやりと夜景を眺める。

望美は朔矢に聞きたかった。この復讐が終わったら、朔矢はどうなってしまうのか。私はどうなってしまうのか。

…いや、どうすればよいのか。

聞きたくて、でも聞けなくて。電車はだんだん田舎を抜け、人が多くなってくる。どんどん、そんなことを聞けない空気が作り出されてゆく。

(…もうだめか。)

乗り換え駅に着いた。朔矢は乗り換えずに行くはずだ。望美はバッグを持ち、朔矢にちょっとだけ手を振って、電車を降りた。

今まで乗っていた電車の扉が閉まる音。振り返って…望美はえっ、と小さく叫んだ。

朔矢が笑って立っていた。望美の肩をとんとん、と叩き、口を開く。

「今日、泊まらせてよ。久しぶりに。」

「…いいけど?」

あ〜あ。無愛想になってしまった。でもいい。これで、きっと聞ける。二人だけだから、誰かに聞かれる心配もない。

望美の顔がほころんだ。この日、望美は初めて心から笑えたような気がした。

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最寄駅に降り、家へ向かって歩く。朔矢は物珍しそうにきょろきょろとしている。望美はそんな兄を見て苦笑した。こんなふうに笑ったのも、ずいぶん久しぶりのような気がした。

ほんの少し、思い出に浸っている望美の視界に、何かがうつった。

前から、二人づれの男が歩いてくる。一人は50代前半くらいで、もう一人は30代くらいだ。会社の上司と部下に見える。二人は何やら書類に目を通しながら歩いている。あぶないな…。

男二人と、朔矢と望美の間が迫る。そして。

「!?」

「うおっ!?」

…衝突した。

男たちの見ていた書類が、道路に散らばる。

「うわっ…!!」

「朋崎さん!!前を見てくださいよ!!」

そう言いながら、30代くらいの方の男があわてて書類を片づける。50代くらいの朋崎と言う男も、顔面蒼白で書類を集める。

朋崎…?

「朋崎…隼人…おじさん?」

朔矢がぽつり、とつぶやく。その途端、朋崎ははじかれたように顔をあげた。

望美もはっとした。そうだ、この人…。

怪訝そうに30代の男が見る中、朋崎は朔矢と望美の顔をまじまじと見つめた。その目に、懐かしさが宿っている。

「…弓月朔矢君?それに、望美ちゃんじゃないか!!」

「「