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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 月と復讐とチャットルーム【参照300超えしました!!】 ( No.69 )
- 日時: 2012/03/08 13:47
- 名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)
4.朔矢の不安
「…ふう。」
帰ってきた。
荷物をどさりと投げ出し、朔矢は椅子に座った。
あと2人。もう、ここまで来た。今更引き返せないだろう。
朔矢は自嘲気味に笑った。1人目、篠原麻衣を殺したときは、こんな気持ちにはならなかった。殺人はあっけなく出来てしまった。無防備にさらされた背中に刃物を突き刺すだけでよかった。
いつからだろう。こんなふうに、殺人を心から楽しめなくなったのは。
自分の精神状態が平常に戻ってきてしまっているのか。はたまた、香織の亡霊がそのようにけしかけるのか。
朔矢は、望美のあの言葉を思い出した。
『復讐が終わったら、朔矢はどうするの?私はどうすればいいの?』
朔矢は再び、ため息をついた。
『僕は出頭するよ。望美は罪をかぶる必要はない。そのあと、普通に生活すればいいよ。殺人のことは、忘れて。』
『…いや。』
‘いや。‘
その言葉は、朔矢にとっては予想外だった。
『…何で?』
『10年ぶりに、せっかく会えたのに。また会えなくなるのはいや。朔矢が出頭するというのなら、私も出頭する。』
『バカなこと言うなよ。陸斗さんと江梨子さんがかわいそうだ。子供二人が刑務所行きなんて。』
『おんなじよ。1人が行こうと2人が行こうと。私はいや。朔矢についていくつもり。それだけ。』
朔矢は静かに目を閉じた。
殺人をすれば…刑務所に入るのは当然のことだ。それが被害者への一番の償い…。
…そうだろうか。
本当に、そうなのだろうか。
わからなくなってくる。頭がこんがらがってくる。
…望美、いったい、君は。
…望美、君には、
‘何が見えているんだ?‘
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