ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 月と復讐とチャットルーム【参照300超えしました!!】 ( No.70 )
- 日時: 2012/03/18 10:22
- 名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)
5.
暗い、とある住宅街の中にある公園。そこに、望美が立っていた。
電灯には蛾が飛び交い、人っ子ひとりいない。
小さな子たちが上る、セメントの山にもたれかかり、望美は公園の入り口を見つめていた。
午前0時。公園内の時計の短針と長身がぴったりと重なる。
その時、ふいに一人の男性が公園に入ってきた。
30代くらいで、意志の強そうな目をしている。
…滝亮介だった。
「…こんばんは。」
「こんばんは。ごめんなさい、こんな遅くに呼び出して。」
望美はかすかに笑って言った。滝はうなずいたが、顔つきは険しい。
「それで、何の用なんだい?」
滝はいぶかしげに望美を見る。10年前の、荒木優太の事件の遺族。この子だって、今回の事件の犯人候補なのだ。
「…今回の、一連の事件の犯人に、心当たりがあるんです。」
「…本当かい?」
「ええ。それを、話しておきたいと思って。このことはまだ極秘事項なんでしょう?なら、人目に付かないようにお話ししなくちゃと思ったんです。」
「…いったい…。」
そこまで言って、滝ははっとする。
「何で僕なんだ?朋崎さんを呼べばよかったのに。」
「ああ…実は、その心当たりの人、朋崎さんの知り合いなんです…。だから、言ったらショックだと思って。」
「ショックも何も。警察は犯人を捕まえる仕事だよ。たとえ犯人が知り合いだろうが、なんだろうが、良心の呵責をしちゃいけない。朋崎さんも、それはわかっている。」
「でも、まったく良心の呵責がないとは限らないじゃないですか。だから、とりあえず滝さんにお話ししたかったんです。こっちに来てくれませんか。犯人の写真を見せます。」
望美はバッグを探り始める。滝はいまいち納得しないながらも、彼女に近づいた。
バッグから、望美は写真を取り出した。そこにはひと組の男女がうつっている。セミロングの黒髪の女性に、黒に近い少し長めの茶髪の男性。男性は方耳にだけ銀色のピアスをつけている。
二人は笑っていた。少し、疲れたように。
「…え?」
滝が写真から顔をあげた、その時。
望美がセミロングの黒髪を揺らしながら、何かを振りかざした。
…銀色にきらめく、刃物。
