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Re: 月と復讐とチャットルーム【参照400超え!!返信70突破!】 ( No.73 )
日時: 2012/03/24 10:45
名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)



時間が、ゆっくり進むように思えた。

望美が刃物をふりかざした。

こわばる体をなんとか動かそうとした。その間にも、刃物が迫ってくる。


『気をつけろよ、滝。お前だって…。』


朋崎さん…。

そうだ、俺だって…。

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「…え?」

その言葉は、とても信じられないようなものだった。

10年前、滝は警察の世界に入ったばかりだった。

そんな時、同僚から聞いた。

「HACの飛行機事故で…滝さん…お前のおじいさん…亡くなったって…。」

どう答えたか、覚えていない。

ずっと目標としてきて…そして、ようやく少し近づいたのに…。

なんで。

なんで、逝っちまうんだよ…!!

その日の記憶は、ほとんどない。

覚えているのは、同僚の言葉と、その時の激しいショックだけだ。

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俺だって、10年前の「遺族」なんだ。

(…だめだったな。)

ぼんやりと、滝は思った。

届かなかった。ずっと目標にしていたのに。幼いころから、今まで、ずっと。

(やっぱり、三世はダメってことか。)

自嘲気味な笑いが、滝の口元に浮かんだ。望美が一瞬怪訝そうに眉をひそめる。

刃物は、もう左胸のすぐ前まで迫っている。

(…朋崎さん。じいちゃん。)

ごめんなさい。

小さな子どものするような謝罪を心の中でした瞬間。

滝の左胸を、銀色の刃物が貫いた。