ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 月と復讐とチャットルーム【参照400超え!!返信70突破!】 ( No.77 )
- 日時: 2012/04/01 10:31
- 名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)
3.弓月陸斗
朋崎と陸斗は、幼馴染だった。
親同士の仲が良く、度々会っているうち、自然と仲良くなった。
ただ、二人の性格は対照的だった。朋崎は活発で遊ぶのが大好き。一方、陸斗は控えめな性格で、誘われないと遊ぶことはしない。幼いころからピアノを習っていて、それに関してはかなりの実力のようだった。
小・中と一緒で、高・大は別のところだった。そして朋崎は警察官になり、陸斗は音楽関係の仕事に就いた。
++++++++++++++++++++++++++++++++
「おめでとう、ハヤ。」
陸斗が訪ねてきたのは、朋崎が警察官になってすぐの頃だった。その頃、陸斗はすでに仕事に就いていた。
「ああ、ありがとう。」
しばらくは形式めいた会話をしていたが、そのうち、朋崎は不思議に思ったことがあったので聞いてみた。
「なんでピアニストにならなかったんだよ?」
それを聞くと、陸斗は困ったように肩をすくめて見せた。
陸斗はピアノの腕を徐々に上げ、ついにはプロのピアニストになれるくらいまでになっていた。彼を高評価する者も多かった。が、2年前にふいっとピアノをやめてしまった。そして、今は音楽関係の仕事に就いている。
「う〜ん…だって、プロになったらつまらないだろ。」
そう言って、陸斗ははにかんだ。
「つまらない?」
「うん。第一俺、ピアニストになりたかったわけじゃないし。ピアノ弾くのは好きだけど、…なんていうのかな、仕事にはしたくないっていうか…。」
「趣味でとどめときたいわけ?」
「そう、そう。」
「でも音楽は仕事にしたいんだ。」
「うん。音楽は仕事にしてもいいかなって。なんかうまく言えないけど。」
昔から、ちょっと変わった不思議な奴だった。朋崎自身、よく陸斗が理解できなかったが、特に問い詰めることはしない。
「そっか。」
「うん。」
それっきり会話がはずまず、朋崎は少し気まずい思いを抱いていた。その時、陸斗が少し声のトーンを落として、こう言った。
「俺、結婚するかも。」
「…はい?」
いきなりすぎて、変な声を出してしまった。
「大学のサークルで一緒でさ、偶然同じ会社に勤めた子がいるんだ。その子と…あの、逸見江梨子。知ってるだろ。」
「ああ、逸見さんか。」
朋崎も知っていた。逸見江梨子。大学生時代、偶然町で陸斗に会ったことがあり、その時陸斗は彼女と一緒に歩いていた。お互い自己紹介して、それ以来特に気にすることもなかったが。
「へえ〜逸見さんね。お似合いじゃないか。美男美女。」
「よせよ。」
そうやって、朋崎はからかいつつ、心からおめでとう、と言ったのを覚えている。
まさか、二人が15年後に殺されてしまうなんて、夢にも思っていなかった。