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Re: 月と復讐とチャットルーム【参照400超え!!返信70突破!】 ( No.78 )
日時: 2012/04/01 10:46
名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)

4.物足りない胸の中

「おはよう。」

「あ、望美。おはよ。」

ちょうど大学までの道で朝乃を見つけたので、声をかけた。望美はちらっとあたりを見渡す。真夜は来ていなかった。

「今日、レポート提出だっけ。」

「そうそう。私昨日やっと終わったよ〜。」

「え〜?私は一昨日には終わったよ。」

「望美すご〜い!!」

朝乃はにこにこしてぱちぱちと手を叩く。騒がしい雑踏の中でも、その音はよく響いた。

「望美、調子戻った?」

「えっ?」

「なんか顔色悪かったじゃん。最近。でも今は顔色いいよ。なんかあった?」

「別に…そうかな?」

殺人を終えたからかな?なんか、解放感に包まれているのかもしれない。

西村健輔。原谷和也。滝亮介。この三人を殺して、私の復讐は終わった。うん、終わった。終わったんだ!!

お母さん、お父さん。やったよ。恨みは晴らしたよ。

…でも、素直に喜べない。なんで?

「あ、真夜だ。」

朝乃の声で、ふっと我に帰る。真夜君は道にしゃがみこんで何か拾っている。そばにはどぎつい化粧をしたOLらしき人。真夜を嫌そうな顔つきで見ている。

「あー。あの人にぶつかって何か落としちゃったのね。」

真夜はポーチらしきものを拾うと、すまなさそうにOLに差し出す。彼女は何も言わずにそれを受け取り、不機嫌そうにその場を後にした。

「感じ悪ぅ…おーい、真夜!!」

「あ、おはよー。」

真夜君はこちらにかけてくる。

「またぶつかったの?」

「うん。ぼーっとしてて。」

「また?」

聞くと、真夜君は自嘲気味にくすくす笑う。

「よし、行くか。」

「行こう、真夜君。」

「ああ。」

こうやって3人でいつも通り話していても、望美はなんとなく違和感を感じる。

胸の中が、どこか物足りない。

…空虚な、軽さを、感じる。