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Re: 月と復讐とチャットルーム【参照400超え!!返信70突破!】 ( No.79 )
日時: 2012/04/06 10:54
名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode

5.

…来た。

朔矢は物陰で、身を固くする。

階段を上ってくる、カン、カンという音。それが止むと、コツ、コツと革靴の鳴る音が聞こえた。

そして、鍵のがちゃがちゃ鳴る音。朔矢はそっと様子をうかがう。

どこにでもいそうな、普通のサラリーマンだ。鍵をあけると、彼は部屋の中に入った。

普通のアパート。普通のサラリーマン。まさかこれからここで、あの人が殺されようとはだれも思っていないだろう。

朔矢はふっと、口元に笑みを浮かべた。そして、そっと物陰から出る。

空を見上げると、曇っていた。今日は月は見れない。

(あーあ、せっかく復讐が終わる日なのに。)

空は雲で覆い尽くされている。今にも雨が降り出しそうだ。実際、今日は夜に雨が降ると天気予報で言っていた。

朔矢はため息をついた。

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ーあ、もしもし?父さん?ー

「お前か。どうしたんだ急に。」

木下晃は電話で話していた。久しぶりに、息子から電話がかかって来たのだ。

ー明日か大学が休みだから、休みの間にちょっと遊びに行きたいと思って。ー

「遊びに来る?なんもないぞ。男の一人暮らしだからなあ。」

ー僕もだよ。ー

「はは。ああ、いいぞ。いつにするんだ?」

ー僕はいつでも平気だから、父さんの都合のいい日にしてよ。ー

「ああ、そうだな…ちょっと待て…日曜日は確実だぞ。」

ーそうか、じゃあ…ー

息子が日にちを検討し始めた時。

ピンポーン…

インターホンが鳴る。

「あ、悪い、誰か来ちまった。ちょっと待っててくれ。」

木下は保留ボタンを押し、インターホンに着いたカメラで訪ね主を見る。

まだ若い男だった。25くらいだろうか。黒に近い茶髪で、整った顔立ちをしている。

「はい、何でしょうか。」

ーあ、こんばんは。僕、隣に越してきたものです。ー

「ああ、そうですか。ちょっと待っててください。」

木下は玄関に向かう。そういえば、一週間ほど前に隣に住んでいた住人が引っ越して、隣は空き部屋になっていた。もう誰かが越してきたのか…。

玄関のドアを開ける。

途端。

…喉が切り裂かれた。