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Re: 月と復讐とチャットルーム ( No.8 )
日時: 2011/10/20 10:14
名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)


4.飛び散った血


…10年前…

「すいません!!すいませんっ!!」

「うるさいっ!!俺の…俺の翔を返せっ!!」

「本当に申し訳ありません!!」

玄関先で、父の必死に謝る声が聞こえる。

「大丈夫よ…ね、早くあなたたちは寝なさい。」

母がそう言って、望美と朔矢を寝室へ連れて行く。

「でも、母さん…!!」

「お父さん、大丈夫なの?」

「大丈夫よ。だから、寝なさい。」

朔矢と望美は顔を見合わせた。お互いの、心配そうな顔…。

と…その時だった。

「ぎゃああああああああっ!!!」

家の中に、絶叫がこだました。

「あなた…!?」

母があわてて玄関に向かう。

「望美、行こう!!」

朔矢が望美の腕を引っ張り、玄関へと走る。

「いっ…いやああああああっ!!」

ほどなくして、母の悲鳴が響いた。

「母さん!?」

「お母さん!?」

朔矢と望美が駆け付けると、そこには異様な光景が広がっていた。

玄関の壁に、赤い液体が飛び散っていた。靴置き場には、赤い液体の水たまりができていて、その中に父が赤い液体を流しながら倒れていた。

「あなたっ!!あなたっ!!」

母が半狂乱で父の名前を呼ぶ。その背後で、父を怒鳴りつけていた男が、刃物を振り上げた。

「母さんっ!!」

「お母さんっ!!」

朔矢と望美の悲鳴とともに、男が刃物を母の背中に突き刺した。

「逃げて!!」

母は最期に、そう叫んだ。

望美はそこで、気を失った。

我が家で最後に見たもの…それは、血が飛び散った玄関だった。