ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 月と復讐とチャットルーム【参照500超え!!返信80突破!】 ( No.82 )
- 日時: 2012/04/20 10:06
- 名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode
第九章 月達の最後
1.夜が消えた
NEWMOON>終わったよ
NEWMOONさんが退室しました。
それだけが、チャットルームに残されていた。
望美はカーソルを一瞬「入室する」に合わせ…ウィンドウを閉じた。
シャットダウンをして、机につっぷす。
…終わったのだ。
全ては望美の誕生日から始まった。二十歳の最初の数か月を、殺人で過ごすなんて夢にも思っていなかった。
もうすぐ、成人式。
朝乃と真夜とは同じ市内に住んでいるので、おそらく成人式会場でも顔を合わせることになる。
その時、自分は何を思うのだろう。
二十歳…大人。大人になって早々、私は殺人と言う罪を犯してしまった。それで、これから何十年も、まともに生きていけるだろうか…。
(結局は…)
自分で自分の首を、しめていたのだと、思う。
それを正当化したくて、復讐だから…と、自分に言い聞かせていたのではないかと、思う。
もちろん復讐したかったのは事実だし、復讐できたことに関してはまったく後悔していない。しかし、殺人を犯してまで復讐する必要は、あっただろうか?
私たちは、結局、荒木優太と同じことをしたのだ。
世の中で一番憎いやつと、同じことをした。
「…もう、わからないよ…。」
++++++++++++++++++++++++++++++++
「朝乃!!」
「…望美、はろー。」
T大学のカフェテリア。望美は朝乃を見つけて、声をかけた。
「…朝乃?」
「あ、うん…いい?座っても。」
「うん。どうぞ、座って。」
望美一人でついていたテーブルに、朝乃もつく。近くで見ると、朝乃の異様さは尋常ではなかった。
いつもかわいく結んだり、まとめたりして、ヘアアクセをつけている茶髪は、珍しくろくにとかしていない状態で垂れている。いつもは綺麗にメイクされた顔も、メイクがところどころ適当になっている。服装はつも通りだけれど、確かこれ、昨日も来てたやつだ。洗っていないように見える。
今日の朝乃は…正直言って、ぜんぜんかわいくない。疲れきって、全てを投げ出してしまったようだ。
「どうしたの?何かあった?」
心配になって尋ねる。すると、朝乃はうつむいていた顔をあげた。その瞳がうるんでいるのを見て、望美は驚いた。
「これ…これ、誰にも言わないでね?私と、真夜しか知らないことだから…。」
「…うん。そういえば、真夜君、今日見てないけど…。」
「当然だよ。だって…来てないもん。」
「え?でも…。」
今日は授業のはずじゃ。そう言いかけた望美を、朝乃は手で制した。
「…真夜の…お父さんが…。」
朝乃の頬を、一筋の涙がつたう。
「…殺されたんだって…。」
…時が、止まった。
思考が、停止した。
望美は、体中から血の気が引いていくのを感じた。
朝乃はこらえきれずに大泣きしている。メイク、落ちちゃうじゃん…真っ白になった頭で、ずれたことを考えた。
「お父さん…お名前はなんていうの?」
「…晃。日曜日の日に、光って書くやつ。晃。木下晃。」
…望美の最後の望みが…打ち砕かれた。
全身に冷や汗をかいていた。まさか。まさか。まさか…。
なんと言ったか、自分がいつ、大学を出たのか、覚えていない。
ただ、気がつくと、望美は知らない通りを歩いていた。
ぼんやりとした頭で、あの書類の文字を思い返す。
名前:木下晃
