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Re: 月と復讐とチャットルーム【参照500超え!!返信80突破!】 ( No.86 )
日時: 2012/05/17 10:15
名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode

3.

「…。」

「…。」

重苦しい、沈黙の時間。目の前でただうつむいている、僕の妹…望美。

息苦しさに、僕はコーヒーカップを手にとって、一口飲んだ。苦い黒い液が、喉元を通って落ちていく。

望美のカップを見ると、ほとんど減っていなかった。息苦しくないのだろうか、望美は。

「…あの。」

ふいに、望美が口を開き、顔をあげた。僕はカップをテーブルに置いて、じっと彼女を見る。子供の頃から変わらない、意志の強い目が、今は何かに揺れ動いている。

「その…助けてくれて…ありがとう。」

「…ああ。」

いくらか返事が間の抜けたものになってしまった。望美はそれだけ言うと、また目を伏せてしまう。僕は少し後悔しながら、望美の顔を覗き込む。

「何があったの?」

「…え?」

「だから、何であんなところで倒れたのかっていうこと。」

それを言うと、望美はため息をつき、更にうつむいてしまった。僕は質問の仕方を変えてみる。

「復讐に関係すること?」

望美は答えない。が、僕が再び質問をしようとした時、望美はそれを手で制し、顔をあげた。

その顔に、思わず息が詰まる。目にはうっすらと涙が浮かび、強い意志をもった目はどんよりとして、表情もけだるそうだ。あの頃の…あの頃の望美はどこに行ったのか。

「…最後の。」

「ん?」

「最後に殺した人の名前は…。」

「木下晃。それがどうした?」

いったい何が言いたいのか。僕が怪訝そうな顔をしていると、望美は黙って席を立ち、鞄からなにかをとりだしてきて戻ってきた。

「これ…。」

そう言って差し出してきたのは、一枚の写真。

背景はどこかのテーマパークのようだ。そこに望美が、一人の青年と並んでピースサインをしている。青年は望美と同い年くらいで、すこしはにかんだ笑みを見せている。黒い髪にはすこし寝癖がついていて、服装も「今どき」という感じではない。普通の女の子にはあまりもてなさそうな感じだ。

「この子は?」

青年を指さして言う。

「…トモダチ。」

一瞬躊躇した後、「友達」とは聞こえない感じで「トモダチ」と言う。
どう考えても、「友達」以上の存在なのだ。望美にとって。

「で…この子と木下晃にどんな関係があるのさ。」

何気なく聞く。望美の口から、思いがけない言葉が出るとも知らずに。

















「親子。」

















「…え?」