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Re: 月と復讐とチャットルーム ( No.9 )
日時: 2011/10/30 10:25
名前: 久蘭 (ID: uWXzIoXb)

第二章 「新月は赤く染まる」

1.朝と夜

「望美〜っ!!」

「朝乃、おはよう。」

T大学駅の改札口で、望美は言った。

改札から、親友の朝乃が出てくる。いつ見ても、「おしゃれだなあ」と思う服装。

「ねえねえ、真夜見なかった?」

「真夜君?」

朝乃の問いに、望美は首を傾げた。

「見なかったけど…。」

「そっかあ…真夜、携帯電話忘れてったらしくてさ。真夜のお母さんに届けてくれるように頼まれたんだけど…。」

朝乃はそこまで言ってから、はっとしたように改札の向こうを見た。

「真夜!!」

朝乃の声に、一人の青年が反応した。

「…朝乃?望美ちゃん?」

「早く早く!!」

朝乃にせかされて、真夜はあわてて改札から出てきた。

「なんで私より早く家を出てるのに、私よりも来るのが遅いの?」

「ちょっと…乗り換えを間違えて。」

「はあ?」

二人の会話に、望美は思わず笑った。

「…真夜君らしいね。」

そう、望美が言うと、真夜は少し照れたように笑った。

高川 朝乃と木下 真夜は、小さいころからの幼馴染だ。

家も近く、二人はまるで兄妹のようにして育ったらしい。

「ほら、携帯電話!!忘れてってたわよ。」

「ああ、ごめん…。」

真夜はまた、照れたように笑って携帯をリュックサックにしまう。

その姿を、望美はかすかに笑って見ていた。

…真夜は、望美の想い人だった。