ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: RPGごっこ 【オリキャラ募集中!】 ( No.19 )
日時: 2011/10/14 07:05
名前: 更紗蓮華 (ID: 9uhgIwvd)

「……知らない天井だ」

習い性で夜明け直前に目が覚めたあたしは、見覚えのない木でできた天井を見て、反射的にそうつぶやいた。特に意味はない。
しばらくそのままボーッと横になっていたが、やがてゆっくりと体を起こす。
ぐるりと部屋の中を見回し、鍵置きのようなフックに黒鉄色の板がぶら下がっているのを見つけて、重く長くため息をついた。

「夢じゃ、なかったんだ……」

いや、現在進行形で知らない土地にいるんだけどね? 板見て初めて現実だと実感するって、なにさ。
自分で自分にツッコミを入れながら、もぞもぞとベッドから這い出る。

「そういや制服のまま寝ちゃったな」

白と藍色を基調とした爽やかなデザインの夏服は、着たまま寝られるという今までにない過酷な処遇をうけて、シワシワだ。
あーもう、これアイロンかけないと直んないじゃん。とりあえず着たままパンパンとはたいてみる。所詮気休めだ。
……だけど、服無いしなぁ。しょうがないよね?

「とりあえず、散歩にでも行くかな」

たぶんまだ5時半ぐらいだけど、あたしは毎朝この時間に起きていたので全然眠くない。
昨日は村ついたのもう夜だったから、すぐこの宿屋に入って寝ちゃったんで、あんまり村の様子とか構造とか見てないんだよね。
なんか普通に村、しかもヨーロッパとかに近い雰囲気があったけど。言葉が通じるのは、宿屋の女将さん相手で解ってたんだけどさ。

壁のフックにぶら下がった板を取り、首から下げる。だってこれ、色々便利じゃん。他にも機能ありそうだし。
あたしが借りた小さな部屋(ホントにベッドしかない)を出て、すぐに出口が見える。
……セキュリティーとか大丈夫なのか。まあ、こんなのどかな村の小さな宿に押し入ってくる奴なんていないか。
受付の机に突っ伏して寝ている(腰とか首とか大丈夫なのか?)女将さんを起こさないように、そろりそろりと出口の方へ。
ちなみに、代金は前払いだったので問題ない。お金? 板でピロンと。E●yかなんか? 残高、確かめられんのかね。

「いってらっしゃぁい。気をつけてー……」
「っ?!」

と、絶対に起こさないように細心の注意を払っていた、そしてさっきまで確かに寝ていたはずの女将さんが、寝ぼけた声でそう言った。
起きてたの?! いや、今起きた? 宿出ようとしたから? どんだけだ。
女将さんが起きたのなら、とギイィと音を立てて(わざとではない。立て付け悪いのかな?)扉を開け、外に出る。

……なるほど、村だ。いや、昨日も見たけどね。やっぱ、多少は明るいところで見ると違うな。
こぢんまりとした木造の家が、ちまちまと、だけど比較的まっすぐ揃って立っている。で、村の中にはなぜか小さな沢が。
雰囲気としては、あれだ。ドラ●エエイトのリ●ザス村に似てる。人は全然いないけど。寝てるんだろうね。

「しっかし、やっぱりどっかRPGっぽいなぁ」

村の入り口近くに見つけたお店を見て、ちょっと呆れてつぶやく。
店は3つ。それぞれ看板が盾、剣と杖が交差したの、薬草みたいなというデザイン。
……どっからどう見ても防具屋・武器屋・道具屋です。本当にありがとうございました。
でもさすがに朝早すぎて人がいなかったので、今回は素通り。村の外に出てみる。

「さて、とりあえずレベル上げでもしてみるかなぁ」

昨日あの草原から村に来る途中で何回かモンスターみたいなの見かけたから、その辺を歩いてりゃ、そのうち見つかるでしょ。
というか、そこまで強い奴じゃないと思うけど。色々試して開発した影製武器で吹っ飛ばせたし。

というか、『絡繰り術:闇』はとんでもなく便利で使い勝手がいいことが解った。
まず、武器いらず。だって、考えたままの強度&形に完全になるんだよ? 考えた通りに動くし。
練習して初めに練るのも早く出来るようになったし、不意打ちにも対応出来ることは昨日解った。
あと、手じゃなくて足から、それもあんまり物質化しないで……半分もやもやの気体のまま出したら、ジェット噴射みたいになった。
まさに人間ロケット。帰り急いでたから試してみたら、出来ちゃうんだもん。

「お、いたいた」

道の脇の原っぱを歩いていると、ブタとうさぎのあいのこのような、変なピンクの生き物発見。アレが、モンスターというやつらしい。
昼間活動するのにまだ早いからか、夜行性なのにもうすぐ朝だからなのか、動きがちょっと鈍い。
チャーンス。あたしは、手の中に影で身の丈ぐらいの槍を出す。なんとなく槍のが好きだ。
別にこのまま飛ばしちゃってもいいんだけど、それだとあたしの練習にならない。できるだけ静かに、こっそり後ろから近づく。

「ブキッ!」

と、こちらに気づいたのか、ブタのような鳴き声をあげたモンスターが、こっちに突っ込んできた。
ちなみにこいつ、大きめのブタぐらいは普通にある。つってもブタどまりで、イノシシサイズは見たことないんだけど。
でも直撃喰らうと痛いので、相手の進行方向まっすぐ、寄りも少しだけ左斜めに槍を構える。

「ブキィッ?!」

黒い槍はブタの鼻の横っちょを切り裂き、鳴き声をあげるブタの勢いで斜めに構えた槍がブタの向かって左側に滑る。
それを利用してブタのすぐ左側に出たあたしは、右手を槍の上に、横から抑えるように添え、
そのまま槍を体の右側、ブタの脇腹を裂くよう半円状に、ブンっと水平に振り切る。

「プギィイィ……」

と、ブタは情けない断末魔をあげてポウン、と消えた。その時出た光が、胸元に下がった板に吸い込まれる。

「ふう……」

なんの動揺もなく、サクサク倒したように振る舞いたいが、やっぱり内心ではちょっと怖い。
……つっても、ちょっとで済ませられるところがいかにもあたしだけど。図太い。

「さあっ! 狩りまくってレベル上げるぞっ!」

だからその威勢のいい言葉も、実は全部虚勢だったりした。
……大丈夫なのかね?