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Re: RPGごっこ 【オリキャラ募集中!】 ( No.33 )
日時: 2011/10/16 15:53
名前: 更紗蓮華 (ID: 9uhgIwvd)

「黒羽さん、オレと付き合わない?」
「……え?」

あいつ……橋本 雅樹がそんなことを言ってきたのは、去年の春……中学生になって、すぐのことだった。
橋本のことは、知っていた。隣のクラスだったけど、明るく元気で運動神経抜群、頭も悪くない。クラスのリーダー的存在。
男子たちの中心的存在で、おそらく行事などでも真っ先にやる気を出して、クラスを引っ張っていくような。
ルックスも悪くない(他の人に言わせれば、かなりいい)ので、一学期のこの段階で、もう想っている女の子も、少なくなかったはずだ。
それに比べてあたしは、とてもじゃないけど、人が自然と集まってくるタイプではない。
確かに成績は悪くない。運動神経も、いい方だ。
だけど、言ってしまえばそれだけだ。無愛想で冷たそうだし、女の割には背も高いし、飾りっ気ないし。
いや、あたしに言わせてもらえば、無愛想に見えるのは主に目つき&ちょっと人見知りなせいで、
話しかけてもらえれば、結構誰とでも楽しく話せると思う。
背が高いのは、まあしょうがないとして、飾りっ気がないのは……単純に、この背丈にあう可愛い服が、無いのだ。

あたしだって、可愛い恰好したい時期もあった。もちろんあったさ!
あたしだって一応……自分で一応とかつけるのなんだけど、女子だよ?
ふわっとしたスカートはいて見たかったし、リボンとかにも憧れた。
だけど……それら全部、壊滅的に似合わなかったのだ。
小学4年生の時点で、すでに中学生に間違われるほどの背丈があったあたし、もちろん服もティーンズサイズが当たり前。
だけど、そのサイズのスカートなんて、小学生からしたらちょっと大人びたデザインが多く……
……本気で中学生に間違われて、子供料金で電車やバスに乗れなくなった。
学校でも、知らない低学年の子からは「おねーちゃん、今日学校おやすみ〜?」と訊かれ。
知らない高学年の人からは「あ、中学生だ! ◯◯中かな?」と囁かれ、おまけに年上の男子に「ちわーっす!」なんて言われる始末。
おまけに同学年のやつらからは「老け顔」「おばさん」「女男」なんて言われて……
……そう、「女男」。スカートはいてたから。……どう考えても、女子に言うセリフじゃない。
そもそも、いくら年上といえど、女の人に男子が「ちわーっす!」なんて挨拶するか普通?!
なに、あたしそんなに男に見える? そんなに老けて見える? ……上等だ、だったらもっとそれらしい恰好してこようじゃないか!
……とかなんとか、当時のあたしが考えたかどうかは忘れたけど、似たようなとんでもない理由で、そのときから服装が変わった。
フリフリ、とまでは行かなくても、普通に女の子っぽかった服装が、完全にズボンオンリーに。
お下がりと聞くと「えー」とか不満たらたらだったのが、何も言わなくなり。
……あたしはその当時、見た目はどっからどう見ても中学生の男の子だったらしい。

家族からしたら、服に頓着しなくなったので出費が減り、しかも結構似合うし、あたしの変化に喜んでいたらしい。
……まあ、そうかもね。子供の好みなんてコロコロ変わるし、反応なんてそのぐらいでしょうよ。
それはともかく、その時から動きやすく汚れても大丈夫な、ティーンズサイズのお下がり服……
……つまり、いかにも男子な服装をしてたせいで、周りがあたしの服装をとやかく言わなくなった今でも、あんまりスカート好きじゃない。
まあ、さすがにちょっとおしゃれしようかな? と最近、中学生になってから思ったけど、
新しい服買いたいって母さんに言ったら、「お兄ちゃんのでがまんしなさい」と返ってきた。
……これは、どういうわけ? 年頃の娘がおしゃれしたいって言ったのに、兄のお下がりで我慢しなさいって。
お金無いならともかく。そんなことはなかったはずだ。さすがに、服の2,3枚ぐらい買えるぐらいの収入は、あったと思う。
しかもあたし、「買って」じゃなくて「買いたい」って言ったんだ。自分のお小遣いで、買いたいって。
他の女の子たちに聞いたところ、可愛い服を買ったりするのは、それだけで楽しいことらしい。友達と一緒なら、なお良いとも。
だから、それを体験してみたいから、わざわざ「買いたい」って言ったのに……にべもなく、却下。
父さんにも相談してみたら「何を言っているんだ紫苑」。次いで、「そんな服買っても、意味ないだろう」。
……これはつまり、「お前には女の子っぽい服は似合わないから、必要ない」ってこと、だろう。
そりゃ、似合わないのは自覚してるよ? だけど、父さんだって似合わない革のジャケット着てるじゃん。
母さんだって、父さんとデートの時、ふわふわのワンピース着てくじゃん。あれだって、お世辞にも似合ってるとは言えないよ?
2人が似合わないけど好きな服着るのに、あたしはダメってことはないだろ!
大人と子供だから、という区分も、この場合は当てはまらない。当てはめられてたまるか、不公平だ。
だって、兄さんが着てるジャケットも、絶対に似合ってない。だけど、父さんはあれを買うのを止めなかった。
不公平だっ! なんでダメなんだよっ! あたしだって、おしゃれしたっていいじゃないか!
でも、「無駄遣いするなよ?」と父さん母さん2人揃ってしっかり釘をさされてしまった挙句、
兄さんにも「やめとけやめとけ、ぜってー似合わないから」なんて言われた日にゃあ……。
泣き寝入りするしかないじゃないかっ?!

っと、まあ話はそれたけど、そんな飾りっ気一つない、がさつなあたしに、クラスのアイドル的な橋本が、告白?

「どうして?」

はっきりいって、信じられない。罰ゲーム? ……ありえるな。
とか考えながら尋ねてみると、橋本はニッコリと笑って、言った。

「だってお前、可愛いじゃん」

って……。




字数オーバーするので、一旦ここまで。
一話に収まらなかった……。長い! 長すぎる!
このままだと、あと2,3話使うかもしれません。