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ふわふわ、ふわふわ。
デートなんていう体験、しかもキスなんて甘々な経験をしたあたし、次の日学校に行ったときも、まだふわふわしてた。
ふわふわ、ふわふわふわ。ぼけーっと、ちょっと腑抜けた様子で席についていた。一応、授業は聞いてるけど。
ふわ、ふわ……。

「ちょっと、聞いてるの？！」

と、いきなり耳元で甲高い声がして、ビクッと我に返った。気がつくと、あたしの席は怒りの表情の女子たちに囲まれている。
……なに？ ぼーっとしてる間に、一体なにが起きた？
状況についていけずに目を瞬かせるあたしを見て、リーダー格らしい女子……二野さんだっけ？ が、ますます不機嫌そうに顔を歪めた。

「だから、あんたなんかが橋本くんと付き合うなんて、不相応だって言ってるのよ！」

教室中に響く大声。まわりの十数人の女子たちは、「そうそう」「まったくよ！」とか口々に騒ぎ立てる。
……それか。そっか、そうだよね。学年のアイドル橋本くんを、あたしが独り占めしてる形なんだから、そりゃ騒ぎも起こる。
たぶんここにいるほとんどが、内心「自分の方がかわいいのに」とか思ってるだろうし……。
まあ確かに、この子たちの方があたしなんかよりもよっぽど女の子らしい。それはあたしも認めるけどさ。

「なにか言いたいんなら、本人に言えばいいのに……」
「なんですってっ？！」

途端にすごい剣幕でこちらに詰め寄る女子たち。おっと、口に出してたか。

「そもそも、あんたがでしゃばるのがいけないのよ！」
「そうよそうよ、身を引けばよかったのよ！ 分を弁えるべきだわっ！」

と、ピーピーとまくし立てる女子たち。それは逆ギレと言いませんかー？
というか、なんで無駄に上品な口調。だけどそれもそのこわーい顔で台無しだね。
……うん？ なんかあたし、妙に落ち着いてるというか、達観してるな。他人事じゃないっつーのに。

キーンコーンカーンコーン……
「おっと」
「「「「あ」」」」

これ以上ほっといたら激化しそうだなー、とか思っていたら、絶妙なタイミングでチャイムが鳴った。
さすがの女子たちも、それを聞くと三々五々に散っていく。ふう、助かった。


「……はあ」

そして、休み時間。女子たちのキッツい視線がバシバシ飛んでくるから、精神的にちょっときつい。
……逃げよ。あたしは、いそいそと教室から抜けだした。



短いですけど、ここまで。