ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 自殺志願者に与えられた事 ( No.4 )
- 日時: 2011/10/23 06:17
- 名前: 夜空 (ID: RIMOjgnX)
どれくらいのときが経ったのだろう。いつの間にか寝ていたようだ。
ケータイを開くと4時半過ぎだった。生徒の下校時刻は5時くらいだったな。
私の世界が終わるまで、残り僅かとなった時間。さて、なにをするか。
「空が綺麗だなぁ」空の観賞。動きの小さい雲と少し筒色の変わっていく空なんて見てもつまらない。
昔のことでも思い出すか。そう、私がいじめを受け始めたあの日のこと。
確か、今とは比べ物名なら無いほど暑かった6月。あの日、あの時、私の世界に終わりが始まっていたんだっけ。
『紫音ー。ちょっと聞いてよぉ』
一人が好きだった私にも友達は居た。
『なに、瑠華。早めに済ませてよ』
そう、杉山瑠華だ。なぜ、いつ、どこで、どうして、どの様な理由で友達になったかは不明。記憶に無い。
『……紫音、つめたい。何でそんなにつめたいのぉ?』
『別に。わたしは一人で居るのが好きだから』
『酷い! そんな理由なのぉ!? もしかしてうちのこと嫌いなの!?』
あの頃の瑠華に言えたら言いたいこと。「嫌いではないけど、しゃべり方、何とかならない?」
『そんなって。立派な理由でし『紫音はうちと友達のふりをしていただけなんだ!』
ああ、確かにそれはあるけど。でも…いや、否定は出来ない。
『紫音の裏切り者ぉ!』
その次の日から、いじめを受けるようになった。机に落書き、下駄箱に腐ったパン、ロッカーに妖怪の死体。など。
妖怪は殺してしまっても誰にも怒られない。ただ、人を襲う獣なのだから。むしろ殺すべき存在なんだ。
わたしは、そんな妖怪以下の存在だ。学校へ行く意味も無いし、生きる意味も無い。存在価値すらない生き物。
今、部活も終了して家に急ぐあの生き物達には、生きる意味が存在するのか?
誰かが必要とするならば、それは『生きる意味』なんだ。誰かの為に生きる、と言う。
それにあいつらには自ら生きる気力があるのだろう。わたしには無いけど。
生きる気力、生きる意味、生まれた意味、全てが無いわたしに存在価値など無い。
妖怪みたいに死んだ方が社会に貢献できる。だから、わたしは命を捨てる。
「サヨナラ、世界…」
屋上のフェンスを越えて、空を眺めた。雲が紫がかって、綺麗。
ついでに、今から行く大地を眺めた。空とは比べ物にならないほどにぎやか。
午後5時、わたしの世界は終わる。風は私を送り出す事を喜んでるしてるみたいに強くなった。
風にすら嫌われてるなんて、ね。
そっとコンクリートから両足を離した。重力の力で、わたしの身体は落ちていく。
はずだった。
誰かがフェンスから身体を乗り出し、わたしの腕を掴んでいた。
「………………………………………」
腕の付根に全体重が掛かって痛い。放して欲しいのに、腕を掴んでるやつは放そうとしない。それどころか引き上げようとしている。
「……女性の腕をいきなり掴むなんて、セクシャルハラスメントって言うのよ。放しなさい」
「セクハラって、略せよ。放したら落ちるだろ、馬鹿」
「…セクハラな上に毒舌家? 人として最低、お前も死ね」
私の体が重力に逆らって、屋上のコンクリートの床に着地した。
「人のこといえないだろ、自殺女」
「自殺志願者の邪魔はしないほうがいいわ、セクハラ・お節介男」
フェンス越しの会話。この男、いつまで私の腕、握ってるつもりだ。
男子にしては少し長い気のする髪型。征服を見るところ、この学校の物で、名札の色は中2のものだ。でも、こんな奴同級生に居ない。