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Re: 平和の哥 ( No.3 )
日時: 2011/10/27 22:57
名前: 月夜の救世主 (ID: s.HbjPwj)
参照: ameblo.jp/pokemon19/

「うおおぁ!?」

兵士たちは、またたく間に熱風に吹き飛ばされていく。隊長は軽い体を動かし、しなやかによけた。熱風に当たらない所まで逃げ、そこで小さくつぶやいた。

「スキル所持者か……!」


一方、宝石売りの青年は一緒に拘束された人々を解放し、余計なことはごめんだとばかりにポリンティカから脱出しようとする。が、あと一歩の所で兵士に道を塞がれてしまった。

「なんだよ!俺は別に政府なんかに反感は……!」
「スキル所持者としてお前を強制追放する!」
「……は!?」

アーマーの中から聞こえるこもった声。青年は後ずさりし、別ルートから脱出しようとする。意地でも面倒ごとは嫌らしい。30人程の兵士は後を追う。

「お前らにも、熱風吹かせてやる……!!」
「その必要はない……。」

後ろから低い声。振り向くと、さっきの隊長が。
静かに口を開く。

「どのようにしてスキルを手に入れたかは知らんが……。今の法律を知らんか……。『スキル所持者は強制追放する』と。」
「……マジかよ!いつのまに!?テレビでもそんなの聞いてないぞ!?」
「天神(てんこう)様が仰った。」
「おっしゃったって……。公表はしてないのか!?」
「あぁ。仰っただけでそれは確定した。言うまでもない。」
「おいおいおい!おかしいだろ!?」
「天神様が仰ったんだ!お前を強制追放する!」
「言っただろ!?俺はまだ……死にたくない!」

青年は黄色い宝石、タイガーズアイを取り出す。と同時に隊長も後ろに担ぐ巨大な大剣を取り出した。鈍い光を放つそれは、何でも破壊するようなものに見えた。

「抵抗するか……。俺のバックには30人の兵士がいるのだぞ!」
「待ってくれ!抵抗とかそんなんじゃなくって、逃げるんだよッ!」

〔虎の雷……閃光の瞳!タイガーズアイ!!〕

青年は石を地面に叩きつける。するとタイガーズアイから眩い光が弾き出る。目が痛くなるほどの光は兵士たちの目を襲った。悲痛な叫びを上げてもがいている。が、隊長だけは大剣で光を遮らせていた。

「……くぅ!流石、隊長さんだな……!」

そう言いながら、出口の方へと走っていく。「待て!」と兵士を放っていき、青年を追った。

『まだなのですか、アーロン隊長。』
「スキル所持者を発見したんだ!今、追っている!」

耳に付けるイヤホンから女性の声。アーロンは眉間にしわを寄せ、苛立つような表情を出す。

『貴方の大剣は普通の大剣に比べ、重くできてるんですよ?』
「わかってる!」
『さて、本当でしょうかね?』

嫌味に聞こえる女性の声。通信を遮断し、重い大剣を振り上げ、地面へ振り下げた。するともの凄い衝撃波が青年を襲う。

「ぐおぁ!?」

坂道を転がって、急いで起き上がった。

「いっつっつ……!」
「諦めろ!これ以上、被害を出すわけにはいかない!」
「だったら、そっちが攻撃やめりゃいいじゃんかよ!」
「……ならばここで殺すのみ!」

『それはやめていただきたいな、アーロン隊長……。』

イヤホンから次は男性の声。その声を聞いて、アーロンは黙り込んだ。

「天神様……!ですが!」
『おや、忘れたかい。今までずっと人を殺めて政治を解決してきたが……そんなのはやめだと。私がつい最近変えたばかりではないか。』
「……はい。では、どうすれば?」
『そうだな……こちらへ連れてこい。』
「かしこまりました。」

通信を遮断する。アーロンは大剣を持ち直し、構える。

「貴様を天神様のご命令のもと、中心部へ来てもらおう。」
「断る!!」
「ぬッ?!」
「俺は普通に宝石を売りながら旅するんだ……。今、こんなところで道草食いたくないんだよ。じゃあ……」

と、青年が走り去ろうとしたそのとき……
人が突進してきたのだ。青年は人を振り払う。が、明らかに様子がおかしい。

「なんだよ、こいつらぁ!!」
「人形兵だ!何故、解放されている!?」
「人形兵?!……まあ、そんなことはどうでもいいさ!まずはこいつらどかすまでだー!」