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第一話　ガラスケース



『私たちと一緒に世界を変えませんか』


そう言ってあの人は協力を求めた。
『世界を変える』
その言葉に私は強く惹かれ、魅力を感じた。
私はすぐに了承を伝えた。
そして私は・・・・。



「凪、茶を・・・」


そういいかけて口を閉じる。
誰もいない。
彩女は口角を上げる。

夢現になりすぎたか・・・。

彩女は机の引き出しに目をやる。
唯一つ、鍵の掛かった机に手を伸ばす。
鍵を開け、パスワード式のもう一つの鍵も解除する。
現れたのは一つのバッチ。
丁寧にガラスケースの中に納まっている。

特定の人間に送られる名誉あるバッチ。
仲間であった証拠。
しかし、今では存在が消されるかもしれない忌まわしきバッチ。

彩女はガラスケースを優しく撫でる。


「これは、誇りだ」


私たちの、と彩女はつぶやいた。
その表情は柔らかい。


「さて」


机に鍵をかけ、腰をあげる。
白衣の袖に腕を通し、顔を上げる。


「研究再開だ」


そう微笑む彩女の顔は魔女の顔。
表か裏か。


机の中に眠るガラスケースの裏側には、文字が刻んである。



≪本家研究グループ博士様≫


≪世界総国家連より送呈≫