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Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.124 )
日時: 2012/11/28 18:40
名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)

第五話 笑み


飴を口の中で転がす少女は研究所へと入っていく。
十分に外の世界の散歩を満喫したのだ。
夢星朱亜は上機嫌で鼻歌まで歌っていた。


「ただいまぁ」


数人とすれ違い、朱亜は言う。


「おかえりなさい、夢星博士」
「夢星朱亜博士、おかりなさいませ」


返してくれるが、その声色は冷たい。
無機質な機械と同じ感じだ。
仕方が無いのだ、と朱亜はため息をついた。
これは朱亜が生きてきた16年間まったく変化しないもの。
研究施設で友達と呼べた人たちも、いつの間にか消えていた。
何があったかなんて知らない。
けれど、この世界に入ってから、博士という称号を手にしてから薄々と気づいていた。
本当は、養子に出されたんだとかじゃなくて・・・。


頭の中でフワフワと浮かぶ過去の記憶を消し去るように頭を振る。


「頑張らないとね!」


自分に言い聞かせるようにして朱亜は進んだ。



「夢星朱亜博士ですね」
「え?」


振り向くと薄い笑いを浮かべた背の高い青年がいた。
先ほどまではいなかったはず・・・。と朱亜は眉をひそめた。
それに気づいたのか、青年は笑みを濃くした。


「わたしは人間兵器です。魔神彩女博士によってつい最近造られた」
「え・・・。魔神・・彩女博士が?」
「はい」


朱亜は魔神を嫌っていた。
不気味な紫色の瞳が、鮮やかな赤い唇が人を見下すときに歪むのも、馬鹿にしたような喋り方も。
そんな朱亜の気持ちも彩女は知っているはず。
それなのに何故、その彩女の造った人間兵器がこちらにいるのか。


「魔神彩女博士より子供を預かりました。夢星朱亜博士に返して欲しいとのことでしたので」


そういって差し出されたのは手李拏だった。
朱亜は条件反射に近い動きで駆け寄った。
そしてあちこちを確認する。
正常な手李拏の体。
ホッとため息をつくと、青年は手李拏を床に優しく置いた。


「では、確かに返却いたしましたので」


薄ら笑いを浮かべながら、青年は枯葉に包まれて消えた。
既にいない青年のいた場所を睨みつけながら、朱亜は人を呼んで手李拏を部屋へと運んだ。