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Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.133 )
日時: 2013/01/11 19:11
名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)

第十一話 私はな・・・



目の前で凪の体がゆっくりと倒れこむ。
その姿はまるで、スローモーションの、蝶が地に落ちる姿で。


「ふざけるなぁぁぁぁぁっ!!」
「!博士、いけません!!」


止める人間兵器の言葉を無視して彩女は駆け出す。
狙うは一人。
ニコラスという人間兵器。


「オネーサン・・・僕はオネーサンを傷つけたくはなかったんだよ」


何も写さない瞳を覗き込んでニコラスは言う。

ニコラスは凪を切った。
胸に大きな傷跡があり、中身が損傷している。
それによってエラーが生じて機能停止状態。


「よくも凪を!!貴様ぁぁぁぁっ!」
「!!なんだよっ!」


彩女は白衣のポケットからナイフを取り出す。
ニコラスは突っ込んでくる彩女に応戦するために鎌を構えた。


「なんでそんなに怒ってるんだよ!たかだか人間兵器!しかもこれくらいで機能停止とか古いじゃねぇかよ!!」


そう。
たかだか人間兵器。

そういってアイツらも自分と友達を傷つけた。


「代わりなんていくらでもいるじゃねえか!!」


ニコラスは鎌を振り下ろす。
しかし、それを彩女は見切って上へと飛ぶ。


「う・・嘘だろ!?」


人間とは思えない飛躍力に、ニコラスは驚きの声を上げる。


「博士は幼い頃から辛い現実を目の当たりにしてきているんだ」


いつの間にか凪の体を抱きかかえている青年がつぶやいた。


「幼い頃から生きる術を潜在的に知っている。魔神彩女博士は素晴らしい博士なんだ」


尊敬するようなまなざしで青年は彩女を見ている。


「凪をよくもやってくれたな!」
「何だよ!!一つの人間兵器くらいいいじゃねぇかよ!何なんだよ、お前は!」


彩女の紫色の瞳がニコラスを射抜く。


「私はな・・・」


シュンッと頬を鎌が切る。
それでも彩女は怖気づかない。


「なんだよ・・・!」




「凪の親友だよ」



ゴォッと鋭い風が辺りを覆う。
彩女とニコラスの間を止めるようにその風は存在した。



「あかんよ、魔神さん」


その風の中から現れた手によってナイフは彩女の手から奪われる。

聞き覚えのある声。


「なっ!?」


彩女は普段とは打って変わって取り乱す。


「この子は僕が追ってきた子やねん」


_____せやから。

形のいい唇が笑った。



「壊さんといて?」


黒いフードから水色の綺麗な瞳が彩女の紫の瞳を見据えていた。
ニコリと愛想よく微笑む顔は、どこまでも柔らかい。


「何故貴様が・・・今更ここにいる・・・!」


ギリと、先ほどよりも憎しみのこもった瞳でフードの青年を睨みつける。
整った顔立ちが、いっそう彼女の苛立ちをあらわしている。
しかし、それでも彩女の美しさはそのままだ。


フードの青年はもう一度微笑んだ。


「久しぶりの挨拶はなしなんか?魔神さん」