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Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.139 )
日時: 2013/02/03 11:30
名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)

第十七話 同盟 共闘 援助


世界のトップたちが会議をしている。
その中でただ一人、ずっと沈黙している男性がいる。
外見は若く見える。
しかし、時折彼の事を敬称で呼ぶ年老いた人物たちからそれなりに年を重ねているのだろう。

彼は重々しく口をやっと開いた。

それだけで辺りが静まる。


「つまり・・・同盟を結ぼうというのですかな」


低い声。
ゾクリと鳥肌が立つ。


「え?あ・・それは・その・・」
「先ほどから幾度も遠まわしに仰っているではありませんか」


彼の傍にいる年若い青年が続けた。


「貴国と争いたくは無いのです」


穏やかな声が彼にかけられた。
数人がうなづく。


はぁ、と彼はため息をついた。


「それは我が国が脅威であるから、自らの国の安全か?それとも、我が国の最先端技術か?それとも、我が国の貴重な資源か?」


全てなのだろう。
そこに集まっている全員が肩を震わした。


「仕方がありませぬな・・・」


もう一度ため息をつく。
しかし、『仕方がありませぬな』と言った。
つまり同盟を結ぶことを承諾してくれたということか。
期待に胸を膨らませて顔を緩めた者がほとんどだ。


ニヤッと彼は笑った。


「我が国のみが最強。貴国らと同盟を結んでも我らに利益はなし。それならば我が国の力で貴国らを屈服させるが、利口」
「なっ!」
「では、これにて我が国と貴国らは敵同士。いつ戦が始まるやもしれませぬので・・・」


不気味な足音を立てながら彼は去っていく。
青年もそれに付き従う。



「あああっ!終わりじゃ・・我が国は終わりじゃ!」
「いや、まだぞ・・っ!」
「何の案があります?あの国を敵に回したら・・終わりです」


絶望に打ちひしがれる国々。


「否!我らあの国に劣るが、それぞれの国が力を合わせればあの国と同等かそれ以上となりうる!」


一つの声に、周りが眉をひそめた。


「それはつまり・・、ここにいるすべての国で同盟を結べと?」
「無理な話です!まだ敵対中、そして昔ながらの因縁がある国々と共闘など!」


反対の声が続く。


「いや、あの大きな脅威を共に滅ぼしてから今一度戦をやり直すも、また一つの策」
「そうじゃそうじゃ・・!各国で共闘をしてあの国をまず滅ぼそうぞ!」


賛成の声が飛んでくる。

それでも案はまとまらない。
長年戦を続けてきたライバル関係の国。
かつて領土を奪われた因縁の仇の国。


そんな中で共闘などできるはずがないのだ。



「何故悩むのですか」


フワリと声が聞こえた。


「何者!」
「さて、何者でしょうか?実はわたし自身分かりかねますね」
「無礼な!戯言を・・・っ」


警戒態勢に入る各国。
しかし、少女はうっとりと笑うだけだ。


「何故共闘しないのですか?」
「貴様・・・あの国のものか!?」


ガッと一人が突っかかる。


「えぇ、そうですね。しかし、わたしはあの国が憎くて憎くて・・・」
「・・貴殿は何が言いたい」


フッと少女は笑った。


「貴国らが共闘すればあの国と同等の力が、兵力が。そしてわたしが内側から情報を漏らせば貴国らに勝機が・・」


如何でしょう、と少女は言う。

それは甘美な誘い。


「なんとも魅力的・・しかし、軍事情報を漏らすことは貴殿にできるのか?見たところ兵士でも重要人物でもなさそうだが」


その言葉に少女は笑った。


「“私”は重要人物なのですよ。情報ならいくらでもお出しします・・。どうですか?」


尋ねる。


各国はお互いの顔を見てうなづきあう。
反対の声はない。
少女はまた笑った。


「お願いしよう」


「畏まりました。わたしは風羽(フウ)と申します」


頭を下げる。
フードの中で、風羽は不気味に唇をなめて微笑んでいた。