ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.145 )
- 日時: 2013/03/07 21:20
- 名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)
第二十一話 長年の候
腕を組んで見下ろしているのは遥だ。
そしてその隣には腕をさすっている狐の仮面を付けた女。
「・・・遥・・何故、ここに・・?」
「ちょっと諸事情。あとで教えてやるからよ」
ニッと彩女に笑いかける。
そして幽のほうに目を向ける。
「懐かしい奴もいるしな・・」
そうつぶやくと、ブロックが遥を見上げた。
ブロックを見て遥は驚いたように僅かながらに目を見開いた。
「泣いてるのか」
「あなた誰・・。幽博士に何かするなら・・許さない・・」
睨みつけるが、遥はお構い無しに笑いかける。
ブロックは一瞬ひるんだ。
何かを感じ取ったのだ。
しかし、すぐに睨みなおす。
「泣く人間兵器は初めて見たかなー。いや、泣くっていうのをプログラムする物好きがいたんだなぁ」
クックッと喉の奥で笑う。
すると、狐の仮面の女が小突いた。
「何だよ、白狐」
「興味が湧いたのは別に構わぬが、早に処理をせねばいけぬのではないか?時間がないのであろう?」
仮面の女は古めかしい話し方だ。
白狐、というらしい。
遥はあぁ、と気付いたようにうなづいた。
「じゃあ俺はあの小僧をやるからお前は・・」
「私はこの博士をやればいいのだな」
「・・お前治癒できたっけ?」
首を傾げる幽。
フンッと白狐は笑った。
「私が何年この姿でいると思っているのだ?長年の候というものよ」
きっと仮面の下ではドヤ顔をしているのだろう。
しかし、遥は眉をひそめた。
「え、お前、一体何歳?俺とお前が出会ったときには既に人間兵器だったし・・・えっと・・・であったのが確か・・」
数え始めた遥の腹に一発ぶち込んで、白狐は幽とブロックへと向き直る。
ブロックは身構える。
幽の体をしっかりと抱きしめている。
そんな様子を見て、白狐は仮面の下で薄く笑った。
「案ずるな小娘よ。そやつに死なれてはこちらとしても都合が悪いのだ。私を信用しろ」
安心させるように優しい声音で語りかける。
いつもの猫なで声とは違う。
「お前を信用しろとか・・。初対面の奴にはムリだろ・・」
腹を抑えながらよろよろと立ち上がる遥。
「遥。今日の飯は何がよい?幸いこの近くにはよい食材(毒草)がたくさんあるからなぁ」
ニッコリと笑っているのだろう。
それはそれはとても綺麗に。
遥は顔を青くして、いえ・・・。とつぶやいてニコラスへと足を進めた。
「・・あなたも人間兵器・・」
「そうだ。気付いておると思っていたがな」
幽に近づいて、出血の様子を伺う。
ブロックは少し離れた。
邪魔になると思ったのだろう。
「・・・御主はこの博士に造られたのか?」
視線は幽に向けたまま白狐は尋ねた。
「そう。・・つみきに新しい名前と、命と、生活を与えてくれた。守るために造られたけど、幽博士は、つみきを“つみき”としてみてくれた」
「そうか・・」
「幽博士はつみきの全て。つみきは幽博士の盾となるの」
強い意志のこもった瞳で白狐を見つめる。
「あぁ・・・。貴様は・・この博士のことを真に・・・」