ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.149 )
- 日時: 2013/03/21 11:23
- 名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)
第二十三話 一緒に行こうよ!
『・・君は、誰なの?』
そう尋ねた。
左右別々の色を持つ子供は、怯えたように身を小さくした。
『・・なんで、こんなところにいるの?』
出来るだけ優しく、たずねた。
それでも子供は何も言わない。
ニコラスは少し肩を落とした。
同年代の子供と話すことは初めてだった。
『・・・君は・・誰?』
あきらめようかと思った矢先、子供が声をかけた。
『ぼ、僕はニコラス・フラメル!』
慌てたから舌をかみそうになった。
『歌音言霊・・・』
『ウタオト・・コトダマ?』
首を傾げれば、うなづきがかえってくる。
『何で言霊はここにいるの?』
『・・・言霊はここしか知らないから・・。外になんていけないんだ・・・』
悲しそうに、小さくつぶやく言霊。
ニコラスは首を横に振った。
『じゃあ、僕と一緒に外に出よう!』
『・・・え?』
『外はね、こんなところと違ってとても綺麗なんだよ!』
無邪気な笑顔でニコラスは語り始める。
手が届きそうなのに届かない青い空。
食べられそうな白い雲。
夕方になったら赤くなる空。
夜になったら沈む太陽。
星と一緒に光る月。
綺麗な花。
可愛い生き物。
美味しい食べ物。
自分が今まで体験してきたことを楽しそうに語る。
いつの間にか、言霊はそれに聞き入っていた。
『楽しそうだね』
ポツリと紡がれた言葉。
『うん、とっても楽しいんだよ!』
ニコラスはとても楽しそうに答えた。
『そうなんだ・・。羨ましい・・かなぁ』
『一緒に行こうよ!』
『・・・ムリだよ。言霊には・・・』
首を横に振る言霊に、ニコラスは手を伸ばす。
『大丈夫だよ。一緒に行こう?』
さぁ、と大きく差し出された手。
その手を見て、ニコラスの顔を見て・・。
それからゆっくりと手を伸ばす。
手と手が重なり合うと思った時。
『ニコラス・フラメル!それから離れなさい!』
声が聞こえた。
言霊は手を引っ込ませ、ニコラスはそちらを勢いよく向く。
『あの子をこちらへ連れてきなさい』
『はい』
そこにいたのは白い服の大人たち。
一番前に立っているのはきつそうな目をした女性だ。
ニコラスは女性をよく見かける。
何かとニコラスの元を訪れてはじっと見つめて去っていく、不思議な女性だ。
傍にいた青年はニコラスの手を引いた。
『な、何をするんだよ!』
『ニコラス・フラメル。その兵器は失敗作だ。君とは違う』
淡々と述べられる言葉。
それがただの単語にしか聞こえなかった。
ニコラスは言霊を振り返った。
言霊は女性を見て、そしてニコラスに視線を移した。
目が合うと、言霊は悲しそうに、それでも綺麗に、微笑んだ。
『ありがとう、ニコラス・・』
『言霊っ!?』
その言葉を最後に、ニコラスは腹に痛みを感じて気を失った。
『ありがとう・・・』