ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.153 )
- 日時: 2013/03/31 20:30
- 名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)
第二十五話 鍵と『俺』
ゆっくりだった。
とてもゆっくり。
ニコラスは泣いていた。
確かに泣いていた。
0から創られた兵器。
だからこそ、人間としての構造は完璧に残っている。
ジワリと滲む世界の中で、僕の中の何かが語りかけた。
≪壊してしまおう≫
≪俺が手を貸す。俺はお前で、お前は俺だ≫
≪さぁ、力をやる。鍵を開けるのはお前だ≫
手を伸ばされれば、すがりついた。
助けたいだけなんだ。
≪俺の出番だ≫
世界は暗転した。
そして世界は赤く染まった。
一瞬にして大人たちは倒れた。
あの気取っていた女の博士も、高笑いをしていた男も、みんな何が起こったか分からないっていう顔で倒れている。
前までは家族のように思っていた。
でもそう思っていたのは自分じゃなくて、『僕』だけで。
『『俺』は最初から気に食わなかったんだよな』
言霊へと近づく。
既に周りの子供たちは手遅れだ。
『『俺』っていう存在が出来たのは、全部『お前ら』のせいなんだから』
胸に耳を当てる。
僅かだけれど、息はある。
ニコラスは言霊を抱き上げた。
もうここにいる必要はない。
そして、一緒に行こう、と言ったんだ。
『言霊、お前、死ぬなよ』
ぶっきらぼうに言い放つ。
それでも言霊は弱々しく反応を見せた。
廊下を歩いていけば博士に会った。
悲鳴を上げる奴、銃を持ち出す奴、たくさんだ。
そんな奴らを先ほどと同じようにして前へ進む。
『(逃げ出す奴も許さない)』
逃がしはしない。
数人の博士たちの言葉から、もう小宮には何も、誰も、ないのだと知った。
あぁ、結局助けられたのは言霊だけなんだ。
研究所から出れば青い青い空が見えた。
白い雲と緑色の木々。
中とは違ってなんて綺麗なんだろうか。
『なぁ言霊、見ろよ』
『・・・・・そ・と・・』
『うん。綺麗だろう』
そう顔を見れば、薄く目を開けて周りを見渡す。
ゆっくりと微笑みをつくる。
『うん』
なぜか嬉しくなってニコラスも笑う。
『よし、じゃあ治療してやるよ』
『ね、ニコラス』
『何だ?』
コツンと額同士を合わせられた。
何処にそんな力が残っていたのだろうか。
そんな疑問を持っていれば、言霊の両の瞳が輝き放つ。
『言霊、もうこの体じゃ生きていけないから・・』
『な・・にいってんだよ』
『だから、友達の君に、言霊の全部をあげる』
何を言っているのか理解できない。
『俺は・・・』
『君も『あの子』もニコラス・フラメルで、言霊の友達だから、言霊からの贈り物』
ニコッと力なく笑う。
『言霊の意識も力も、全部ニコラスにあげるから』
そして悟った。
言霊の体が本当に、もう壊れているのだと。
あの時の銃は言霊の機能の核を破壊していたのだと。
『ありがとう、ニコラス。最後にこんなに綺麗な外を見せてくれて』
何処からそんなに話す気力が湧いて来るんだよ。
そういったけど声にならなかった。
『ありがとう』
そんな言葉が聞こえた。