ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.154 )
- 日時: 2013/03/31 20:28
- 名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)
第二十六話 馬鹿だな
『馬鹿だな』
ポツリとつぶやいた。
先ほどまで腕の中にいた言霊の姿は何一つ残っていない。
『馬鹿だなぁ、言霊』
涙が頬を伝う。
しとしとと草に落ちる。
『『僕』の中に『俺』がいたことを知ってたんだ』
自分が二重の人格を持っていることを言霊は知っていた。
どちらも『ニコラス・フラメル』だと言った。
なんて、優しいのだろうか。
なんで、こんなに優しい言霊が、いなくならなければならないのか。
ニコラスは頭を抑えた。
溢れてくるのは涙と怒りと悲しみで。
≪馬鹿だな、お前は≫
呆れたような声が聞こえる。
それでもやっぱり彼も泣いているようで、自分と同じ。
≪言霊はいなくなってねぇよ≫
≪あいつは『俺』と『お前』の中にいるんだよ≫
≪あいつの全部が『ここ』にあるんだよ≫
そっと胸元に触れてみる。
≪最後にあいつはなんて言ったんだよ。『お前』も見てただろう≫
『言霊の意識も力も、全部ニコラスにあげるから』
あぁ、そうか。
言霊は消えたんじゃなくて、『僕』の中に移動しただけで。
全部全部理解したら、言霊の全部が溢れてくる。
今までの言霊の記憶。
言霊の感情も思いも全部溢れてくる。
全てを感じて、見ていたら、涙が止まらなくなった。
『何で・・言霊・・・君は・・・』
何故言霊が反抗したのか。
何故言霊があんなところに閉じ込められていたのか。
何故言霊は全てをこちらにうつせたのか。
全て分かった。
『___________________________________________ッ!』
声もなく泣いた。
泣き叫んだ。
喉がかすれても、叫ぶのは止めなかった。
最後の生き残りが『僕』と『俺』だけなら、この世界が終わるまで、生き抜いてやろう。
そして壊れていく世界を見て笑ってやる。
人間が生み出した博士たち。
博士が生み出した人間兵器。
そして人間を生み出した世界。
壊れていく景色はとても綺麗だろう。
ニコラスは笑みを浮かべた。
涙はまだ流れている。
『馬鹿だなぁ、言霊』
最初につぶやいた言葉をまたつぶやく。
『『最後』じゃないんだよ』
フラフラと立ち上がって空を見上げる。
『これから先も、沢山の景色を見せてあげるよ』
ニコラスの表情は泣きながらも笑っていて、どこか儚げで。
『さぁ、『≪一緒に行こう≫』』