ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.165 )
- 日時: 2013/04/15 19:41
- 名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)
第二十九話 待つ
彩女は眠る凪を見つめていた。
誤作動を起こした部分は全て修復した。
それも1時間かけずに。
幼い頃は“神童”、今は“天才”と呼ばれる彩女だからこそ成し得たこと。
「博士、コーヒー淹れました」
「あぁ・・ありがとう、朽葉」
朽葉の手からカップを受け取る。
「凪・・目を覚ましませんね」
朽葉がポツリと言った。
コクリと彩女はうなづく。
「・・・博士と凪って・・・ただの人間兵器と博士、という関係じゃないですよね」
「・・・あぁ、そうだ」
ここは「違う」と答えるべきだったのだろう。
しかし、彩女の口からはまったく逆の言葉が出てきた。
「・・・友達、ですか?その・・凪も、博士も言っていたので・・」
確かに、彩女はニコラスに「友達」と言い放った。
凪も彩女のことをそんな風に呼んでいた。
「そうだな・・。友達・・かもしれないな」
フッと彩女は笑った。
その笑みは不思議なもので、悲しそうに見えるが、自嘲気味にも見えて。
「あまり他人のことを詮索しないほうがいい。特に過去はな」
「・・・はい、博士」
過去の話をしたくないのだと、朽葉は理解した。
「さて、新羅たちのところへ戻るとするかな」
手を叩いて言う。
「凪はこのまま放っておいても?」
尋ねると、彩女はうなづいた。
「もう修復したのだ。構わない」
「分かりました」
「・・・気になるなら朽葉は待っててもいいけど?」
「えぇ、まぁ・・・。って、え?」
一瞬、理解できなかった。
今、彩女はなんと言ったのか?
「え、博士、今、なんて?」
「だから、気になるんだったら待っててもいいよ、って」
一度で聞け、というように彩女はため息をつく。
「いやいやいや!凪のこと別にそんな風に見てるんじゃないですからね!?」
顔を赤くして慌てたように手をブンブンと振る。
「はぁ?何を言っている」
彩女が眉をひそめた。
理解できない、というような顔だ。
「何故そんなに慌てる?」
「へ?だって・・・」
間の抜けた声を出した。
「お前は凪と仲良くなりたい、とか言っていただろう?」
「あ・・・そういうことですか・・・はぁ・・」
人間兵器として生まれ変わって、初めに目にしたのは凪だった。
そのときに、朽葉は彩女に「彼女と仲良くなりたいですね・・」とこぼしていた。
「前とは逆だろう?」
ニッと笑う彩女。
前は目覚めるのを待っていたのは凪。
しかし、今回はその逆だ。
「はい。じゃあ、ここにいますね」
「あぁ、頼むな」
そういって扉へと向かう。
と、ノブに手をかけて立ち止まる。
振り返ってニッコリと笑みを浮かべた。
「手を出すなよ?」
それはそれは低い声で言い放つ。
ゾクリ、と何かが這い上がる感じがした。
「は、はい・・もちろんです・・・」
「そっか」
満足そうに彩女はうなづいてノブを回した。