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Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.167 )
日時: 2013/04/21 17:42
名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)

第三十一話 たまには



「何故・・・」

ボソリと少女がつぶやいた。
白い髪がそよ、と揺れる。

「何故私はここにいるの・・・」

ややげんなりとした顔で少女はつぶやく。

「たまには博士同士でお茶でも楽しもうかと思いまして・・・」

ニコリと微笑むのは綾音だ。
側にはアリスがいる。

ここは綾音の研究所。
応接間、というやつだ。

「このような場所で時間を使うことは無駄だと思います」

表情を変えずに少年が言った。

「ウチはまだ実験終わってないのにぃ」

ふてくされた顔で言い放つのは幼い少女。
綾音は困ったように表情を変えた。

「あ、扇さんそんな顔しないでぇ。扇さんの作ったケーキ美味しいよ?」

少女はケーキの皿を持ち上げて笑みを浮かべた。
無邪気な可愛らしい笑顔だ。

「買ってきたケーキが美味しいのは当たり前じゃーん」

アリスが横から言葉を発する。

「うんうん。美味しいよぉ」

ニコニコと笑顔で応える。

この少女は、精神的にかなり発達している。
綾音は瞬時に悟った。
この笑顔は仮面だ。
誰にも本心を悟られることのないように付けている仮面。
それも数日とかで身に着けたものではなさそうだ。
もっと、ずっと昔に・・・。
何かあったのだろう。

「って、えぇっ!?買ってきた・・・って何?」

ハッとして顔をあげれば、隣側に座っていた少女がこちらを見ていた。

「あ、そういえば、そうだよねぇ」
「綾音ちゃんケーキ焼けないもん」

アリスがクスクスと笑う。
グッ、と綾音は言葉に詰まる。

「そ・・そうです・・はい」
「え、そうなの?」

少女がバッと身を乗り出して尋ねる。
アリスも同じようにして笑顔でうなづく。

「そうだよ。この前作ったクッキーとか最悪でね。なんかワケの分からないものができちゃったの」
「えぇっ?クッキーって簡単だよぉ、扇さん」
「たま〜に塩と砂糖間違えちゃうんだよ?綾音ちゃん」

楽しそうに話すアリス。

「ちょ、そ、それ以上は言わないで下さいっっ!」

慌てて顔を赤くしながらアリスの口を封じる。
少女はクスッと笑った。

「ちょっと意外だったなぁ、扇さん」
「え、え?そ、そうですか・・・?」
「私も思った。扇さんはかなり家庭的な人だと思ってました」

おかっぱ頭の少女が言った。

「あぁ、ウチも神埼さんと同じように思ってたぁ」
「だよねー」

お互いに顔を見合わせる。
綾音は俯いて顔を赤くした。

「もう・・・皆さん酷いです・・・」
「いいじゃないの。扇さんは不器用ってことで」
「神埼さん!?それが一番酷いです!」
「アハッ。ね、茨黒はどう思う?」

少女が少年に顔を向けた。
少年は興味なさそうな顔をしてこちらに目をやる。

「僕には関係ありません。あと興味もありません」
「茨黒は相変わらずだなぁ」
「君に言われたくありません。ヒストラ」

茨黒は冷たい目をして言い放つ。

「餓鬼だなぁ」

ヒストラは嗤った。