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Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.188 )
日時: 2013/05/05 10:40
名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)

第三十五話 温厚



騒がしい音がする。

「あの小娘・・・バカにしやがってっ」

側にあったゴミ箱を思い切り蹴り倒す。
当然中に入っていたものは飛び散る。

「・・・チッ」

舌打ちをする。

「あぁもう、イライラするなぁ・・・」

そよ、と風が揺らいだ。

「荒れていますね・・報告会で何かありましたか?」

コツン、と足音を立てて扉の向こう側から声がする。
鍵は掛かっていないので簡単に開く。
空いた扉から一人の女性が姿を現した。

微笑を浮かべている女性。
腰まであるストレートな黒髪がさらさらと綺麗に揺れる。
肌は白く、その白に鮮やかな紅色の瞳がやけに印象に残る。
黒のサロペットにニーハイという格好だ。

「神条か・・・」

にこりと神条柩は笑った。

「部屋の中をこんなに散らかして・・・子供ですか?」

文句のように聞こえるが、顔は笑ったまま。
世話好きの母親のようだ。
フフッと声が漏れる。
片付けを始める柩に、男性はスッと目を細めた。

「・・俺がいない間に何かあったか?」

ぴくり、と柩の片付ける手がほんの一瞬反応した。

「・・・お友達がいらっしゃいましたよ」
「友達?」

眉をひそめる。

「えぇ。まだ帰っていないときでしたので、改めて伺うようにお願いしましたが・・・」

グシャッとゴミ箱の中身だった紙くずを握り潰す。

「伝言でも預かったか?」
「はい」

はぁー、とため息をつく。
いつの間にかイライラは引いていった様だ。
深く椅子に座り込む。

「伝言を、話してくれ」

博士としての鋭い目つき。
柩はいつも通り温厚そうに微笑んだ。

「御意に。十七夜様」