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Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.190 )
日時: 2013/05/11 16:56
名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)

第三十七話 博士見習い


一人の青年が書類を持ったまま立ち往生している。
青年の目的は博士に書類の最終確認をしてもらうことと報告。
しかし、その博士が今眠ってしまっているのだ。
それもとても気持ち良さそうに。

「どうしようか・・・」

ポツリとつぶやいた。

青年はこの研究所に最初からいたわけではない。
研究所をあちこち転々としているのだ。
幼い頃から博士に憧れ、『博士見習い』と自らの事を呼び、いろんな博士たちの元へ話を聞きに回っている。
そんな時にここの博士に出会い、『博士になりたいなら一つのところで修行しろ』と渇をいれられ、この研究所に正式に入った。

夢は『人間兵器』を『奇跡と幸せ』の架け橋にすること。

なのだが、大抵の人は笑ってバカにする。
その夢をここの博士は笑わずに真剣に聞き、応援するといってくれたのだ。
つまり、博士は青年にとって最も信頼し尊敬できる人物なのだ。

その尊敬する人物を起こすことは出来るだろうか?
しかも見たところ二人の少年の間で眠っている。
博士を起こすということは多分この二人もおきるだろう。

起こすのは忍びない。

だが、このままにはしておけない。

青年はため息をつき、博士の側による。

「博士、起きてくださ・・」

博士の体を揺さぶるため、触れようとしたその刹那。






「マスターに、≪触れるな≫」






体が固まった。
伸ばした手が少しも動かない。
青年は目を見開いた。

「(何故・・?)」

動揺しながらも辺りに目を走らす。
目にはいったのは博士の隣に寝ていた少年。
こちらを睨みつけ、笛を喉元に当てている。
尖ってはいないが、力と速さを加えれば気絶かそれ以上の事が出来るだろう。

「キミ、誰」

空色の瞳が青年のくすんだ金色の瞳を射抜く。

綺麗だ、と思った。
青い空をそのまま写してきたような色。
澄み渡り、気持ちが、心地がよい風を感じさせる。

何も言わない青年にイラついたのか、少年はもう一度問う。

「キミは誰なの?」

ハッとして口を開く。
少年がこちらを警戒し、敵視しているのは確かだ。

「お、俺は決して怪しいものじゃ・・・。っていうかここの博士見習いなんだ!」

慌てて両手を振る。

「博士見習い?マスターが見習いを付けてるなんて聞いたことないよ」
「本当だってば!・・まぁ、扱いは雑用係なんだけどな・・」

ボソリと悲しそうにつぶやく。

「・・・本当?」
「本当だって!」

眉をひそめる少年。

「ふぁ〜・・・。良く寝たぁ・・」

間の抜けた声が隣から聞こえた。

「博士!」

すぐに青年が声を出す。
博士はこちらに気付き、笑顔を見せた。

「よぉ、奇跡。久しぶりだな。おはよう」