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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.211 )
- 日時: 2013/07/09 20:16
- 名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: T3UB3n3H)
第四十五話 戦の準備
長い廊下を一言も喋らずに進んでいく。
髪を右肩から前へと流すように束ねている青年は、前を歩く人物を見つめ、とある人へと変換をする。
歩く後姿が似ている。
追い求め、恋焦がれた、あの人に。
「如何した、黒耀」
威厳のある声が前から降ってくる。
黒耀と呼ばれた青年は、すぐさま「いえ」と返す。
「そうか」
こちらを見向きもせずに淡々と歩いていく。
彼は知らない。
今、黒耀が短刀を手にしようとしているのを。
刀の柄の部分に人の名前が彫ってある。
その人物への贈り物だったのだろう。
「・・・我が偉大なる王よ、これから如何なさいますか」
刀へと伸びそうになる手を必死に押さえ込んで、変わらぬ口調で問うた。
「決まっておる」
「戦の準備だ」
爛々と輝く瞳には、狂気が映し出されていた。
風が吹く。
優しく柔らかい、甘い香を漂わせる風。
「あれ・・・?」
一人の少年が首をかしげた。
その手は真っ赤に染まっている。
「今・・帰ってきたんだ・・・」
残念そうにつぶやく。
「まぁいいや。まだまだ時間はあるから・・」
手についた血を服でごしごしと取る。
「必ず僕が、この手で・・・」
足元に咲く花を見てニコリと微笑む。
そして・・・。
踏み潰した。
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