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Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.216 )
日時: 2013/07/18 15:10
名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: T3UB3n3H)

第四十九話 ガッカリ


一瞬、何を言われたのか理解できなかった。

『・・・え?』

訳が分からなくて少女を見つめるけれど、少女はニコリと笑うばかりだ。

『僕が・・生きてる理由・・・?』
『あぁ、そうじゃなくてね。ここにいた人は全員殺せって命令したはずなんだぁ』

少女は目線を同じにするために屈んだ。
綺麗な瞳がすぐ目の前にある。

『命令・・?』
『うん、そうだよぉ』

無邪気な笑顔。

つまり、つまり・・。
この少女が、ここにいる人間を全員殺した?
全員殺すように仕向けた?
一番悪いのはこの少女?

『もしかして、親に捨てられて、それでもここに戻ってきちゃったぁ?』

首をかしげて笑う少女に、思わず掴みかかる。

『違う!僕は、母様のお使いをしていたんだ!』

脳裏に鮮明に残っている光景。
いってらっしゃい、気をつけてね。そう送り出してくれた母の声も、姿も、全て覚えている。

『なのに・・っ。帰ってきたら・・・みんなぁ・・・』

また涙が溢れてくる。
少女の胸元を掴んでいた手がゆっくりと力をなくして、重力にしたがっていく。

『・・・ふぅん』

つまらなさそうな声が耳に届いた。



瞬間、体に痛みが走った。
何が起こったのか理解できていない。

あぁ、今日は分からないことばかりだと、呑気に考えた。

『なぁんだ、捨てられたんじゃないのかぁ・・・』

ヒュンッと風を切る音。

体が、痛い。
頭が痛い。
喉が痛い。
腕が痛い。
足が痛い。

『ガッカリだよ』

クスクスと笑う声がする。
倒れている自分の体。
右から?左から?


違う。



両方から。


『殺し損ねてましたね』
『殺し損ねてましたよ』

同じ声が二つ。
左右から聞こえる。

『お使いだったんだってぇ』
『なるほど』
『それは仕方がありません』

視界に写ったのは同じ顔。

『でもかわいそうですね』
『帰ってこなければ死ななくてすんだのに』

あぁ、ここで、死ぬんだ。

『それでは』
『さようなら』

二つの銃口が、こちらに向けられた。