ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.218 )
- 日時: 2013/07/22 10:04
- 名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: T3UB3n3H)
第五十一話 必要?
どこまで歩いたのか、全然分からない。
僕はここで死ぬのだろうか。
気付けば森の中にいた。
癒しの緑。
そういえば、今年のピクニックはまだ行ってなかったな、と思い出した。
毎年森へとピクニックへ行くのが習慣だった。
まぁ、もう行けないけれど・・。
また涙が頬を伝った。
あれから何日たったのか分からない。
どこへ向かって歩いているのか分からない。
あぁもう、眠いや。
寝てしまおう。
ゆっくりと目を閉じた。
一つの影が、倒れている少年を抱きかかえた。
『あぁ、おかえり凪・・・』
『魔神・・・これ・・』
ん?と首をかしげながら振り向いた。
途端に驚いた表情をする。
『何拾ってきちゃってるの・・?』
『森の中に落ちてた・・・。必要?』
淡々と言い放ち、首を傾げる。
ニコッと彩女は笑った。
『丁度必要だったの。見たところ身寄りも何もなさそう・・。隣の部屋に寝かしておいて。目覚めたら教えて』
うなづいて隣へと入っていく凪。
扉が閉まると同時に、彩女は机の上にあった書類を一気に破り捨てた。
『正確なデータを取るには、実験が一番よね』
不気味な紫色の瞳が輝いた。
フワフワする。
あれ、僕、死んだのかな?
まぁいいや。
別に未練も何も無いし・・・。
いや、違う。
僕は・・復讐するんじゃなかったっけ?
誰に?
ヒストラ・・レイス・・。
そうだ。
アイツを探し出して、殺すために、力が必要だったんだ。
だから、あちこちの商人から話を聞いて、人間兵器の話を知って、魔女の話を聞いて・・。
そうだ。
魔女は生贄を求めて彷徨い歩く。
僕は、魔女に求めに行く途中だったんだ。
『・・・起きた?』
『っ!?』
薄目を開けたら覗きこんでいる少女の姿。
驚いて起き上がる。
右手はしっかりと少女の手を握っていて、恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にする。
『え、あ・・う〜・・その・・』
『魔神、起きたよ』
言葉を捜している中、少女は誰かの名前を呼んだ。
『あ〜、起きたぁ?オハヨー☆』
ひょこりと顔を出したのは長い銀髪と紫色の瞳を持つ、綺麗な女の人だった。
手足がすらっと長く、肌は驚くほど白い。
思わず顔を赤く染めた。
『えっと・・おはようございます・・』
『ココアかミルク、どっちがいい?』
二つのマグカップを手に持って笑う。
『じゃあ・・ココアで』
『ココアねー。了解』
右手に持っていたカップを渡す。
温かくて、甘い匂い。
久しぶりすぎて、涙が溢れた。
『うっ・・・』
『いいんだよ、泣いても。子供は泣かないとねー』
不意に感じた頭への温もり。
見上げれば魔神、と呼ばれた女の人が頭に手を置いていた。
綺麗に笑う。
その微笑が、母と重なって・・・。
『ぼ、僕は今年で16ですっ』
鼻の奥がツンッとなったけれど、必死にこらえた。
『あぁ、そうなの?じゃあ凪と同じだ』
多分、凪とはこの少女の事なのだろう。
『あ、あの、僕・・どうしてましたか?』
『ん?あぁ、森の中で倒れていたから凪が連れてきたんだヨー♪』
『うぇっ!?お、女の子に背負われたってことですよね・・?』
『あぁ、気にしない気にしない』
手をヒラヒラとさせる。
『凪は人間兵器だから、人間くらいなら軽々と運べちゃうからさぁ』
見つけた。
僕が求めていた、人間兵器。