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Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.81 )
日時: 2012/10/05 18:33
名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: AKehFwYl)

第三十一話 温もり



報告会から自分の研究所へ戻った綾音は、研究所に入るや否や一人の少女に抱きつかれ後ろへと倒れた



少女ではなく、人間兵器だ



「あ・・・アリス?」


そういうと、アリスと呼ばれた少女はパッと顔を上げた
まだ幼いその容姿は、きっと大人になったら男性を惑わすだろう
しかし、それは叶わない


「綾音ちゃーんっ!」


もう一度強く抱きしめる


「アリス!くるしいで・・」


言いかけてフッと意識が遠のくのを感じた
瞬間、アリスがあわてて腕を放した
大きな碧眼から涙が今にもこぼれそうだ


「ごめ・・・うわーんっ!綾音ちゃん死なないでぇ〜!」
「〜っ死にません!」


泣き出すアリスにそう突っ込む


「あれ、アリス・・何でここに・・・?」


普段は引っ込み思案の綾音だが、自分の研究所では安心するのか普通に話せる


「なんか気になる情報があったから綾音ちゃんに伝えようと思ったんだけど・・・」


そういってまた目を潤ませる


「綾音ちゃんいなかったからぁ〜」
「今日は報告会だったんですよ」


ふぇっ、と自分の白衣にしがみつくアリスの頭を優しく撫でる
数回それを繰り返すと、落ち着いたのかまた笑顔に戻った


「綾音ちゃん」
「はい?」


そしてニッコリと無邪気な笑顔で言った



「おかえりなさい」


一瞬驚いた綾音だが、すぐに微笑んだ


「ただいま、アリス」
「!えへへ・・・」


照れたようにうつむきながら笑うアリス



「じゃあ、とりあえず私の部屋に行きましょうか」
「わ、綾音ちゃんの部屋?」
「はい。そこでその情報を教えてください」
「うん!」


元気に返事をする
そして綾音はクスッと笑った


「砂糖菓子とか食べながらね」
「わぁっ!嬉しいな!!」」


アリスは綾音の手を握りながら喜んだ



綾音の造った人間兵器は、食事を取ることが可能である
とらなくても死にはしない
しかし、綾音は味覚を人間兵器につけた

このようにオリジナルに人間兵器に何かをつけることは他の博士もやっている
別に規制されてはいない
ただ、“存在理由”から外れていなければいいのだ



あるものは“感情”を完璧に消し去った

『感情なんて必要ないんでは?』


そう冷たく言ったのはまだ年端もいかぬ少年で


あるものは“痛覚”を与えた

『痛いのが嫌なら相手をさっさと潰すだけでしょぉ』


そう楽しそうに言ったのは幼い少女で


そんな少年は、少女は、博士になったがためにこのようになった



「(本当ならば、アリスも・・・)」



幼い人間兵器を見つめながら思う



「(あの小さな博士たちも・・・)」
「・・・・綾音ちゃん?」
「・・・はい?」
「綾音ちゃん、笑顔だよ、笑顔!」


そういってニコリと笑うアリスに、釣られて笑う


そう

もう過去は変わらないのだ

あの子達がこの道を選んだのだ

今をどう生きるかが、大切なんだ



「・・・・アリス、私は私の道を歩きますね」


強い意志を持った目で言うと、アリスはうなづいた
その目は幼くは無い


「あたしを救ってくれたのは貴方だから。あたしは貴方についていく。大丈夫、信じてる」


「・・・ありがとう」


もう一度つないだ手は、なぜか温もりを感じた