ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 少年少女 ( No.1 )
- 日時: 2011/11/07 09:58
- 名前: 緑紫 (ID: rb3ZQ5pX)
- 参照: 只今37度の熱出してますどうも
♀序章♂
「——畜生…! また一人…殺された……ッ!」
23時54分。少年の叫びと、雨の音だけが、薄暗い街に響き渡る。その少年の横には、赤黒い水たまりと、茶髪ロングヘアの、10代前半程の少女が。しかしその少女は既にこの世を去り、亡き人となっていた。
「オレはまた……守れなかった!! 畜生ッちくしょおおおおおおおおおおおお!!」
その少女を抱きしめ、泣きじゃくる少年。
「あははっ! 本当に最低な奴だねぇ、キミ! 女の子一人も守れないなんてさぁ! 目の前で女の子が殺されかけてたのに、何もできないなんて! ボクねぇボクねぇ、そーいう弱っちい奴をいじめるの、すっごく好きなんだよね!」
そんな少年の前に無邪気に笑い掛ける子供が。
子供、と言っても、黒フードで全身を隠しているのでよくわからないが、声と身長から、9歳、10歳くらいの子供だろう。
そんな子供が少年の首筋にナイフを当て——ニヤニヤと笑う。
「キミのようなタイプの人間はねえ、ボクがこうやって脅すと、『許してくれ、もう何もしないから殺さないでくれ!』って言うんだ。おかしいよね、悪いことしてないのに許してくれ、だなんて!」
少年は何も言わずに、子供の顔らへんを睨み付ける。子供は睨み付けられていることに気付いてか気付かずか、ナイフを仕舞う。そして、言葉を続ける。
「そういう奴はさ、真っ先に殺しちゃってたんだけど——キミは違うタイプだったようだね! いやあ、ますますいじめるのが楽しくなってきちゃうなあ!」「おいこら、いつまで人間と戯れてるつもりだ。何十分ワタシを待たせる、糞餓鬼が」
そんな子供の背後から、次は20代くらいの女性の声が聞こえた。彼女もフードで身体全体を隠しているため、顔立ち等はよくわからない。
「おっと……怒られちゃたよ…残念、キミをいたぶるのは、次回に持ち越しだ! んじゃねっ」
ブウン。
音が鳴って、二人の姿が消える。
「…………んだったんだよ、あいつら…」
緊張していたのが解けたのか、少年はドサリとその場に倒れ込んだ。
「久麦さん!」
遠くで自分を呼ぶ声が聞こえ、少年はゆっくりと起き上がる。多分あの声は鳥島癒愛だろう。
「………ッ…。手遅れ、でしたか……」
少年、久麦巴の抱き抱えている少女を見て、苦しそうな顔をする癒愛。
「すみません…私がもっと早く来ていれば……!」「別にお前がいたっていなくたって、状況は変わんねーよ」
少女を持ち上げて、歩き出す巴。
「そう…ですよね………」
俯き加減に癒愛は呟き、巴の後を追いかけた。
♀♂
「あはは……巴クン、久し振りだなあ。大人びた顔立ちになったなあ」
とある廃墟。その一室で、どでかいモニター画面を見つめる30代前後の男がいた。
「『少年少女』だっけか……そんなグループの一員なんだよねぇ。何でもボクらが生み出す【異物】を倒すために結成された組織だって聞いたよ…」
一人でそう呟いた後、モニターのスイッチをオフにする。
「でもねぇ……世の中そう簡単には行かないのさ」
ニマニマと笑っていた顔から、表情を殺し、男は呟く。
「さぁて、ちょいと出掛けようかねぇ」
また表情を戻し、男はその部屋から姿を消した。