ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 悲哀と世界。 ( No.1 )
日時: 2012/01/12 20:47
名前: 結城柵 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)

【加虐性愛者はこうしてつくられる】

 その日は、蒸し暑くて、蝉の声がひどく騒がしかったことをよく覚えている。
この世の悪意を見せつけるように叩き付けられた現実を、僕はただ静かに見つめることしかできなかった。
 親友のなきごえが今も鼓膜にこびりついている。親友の白いからだが今も角膜に焼き付いている。赤色と白色とか入り交じった液体と、すえたにおいが充満する小屋の中をまだ忘れてはいない。

忘れられるわけがない。

無造作に床に投げ捨てられた親友たちを忘れられるはずがない。
 それは、忘れてしまいたいぐらいひどい光景だった。
けど、僕にはひどく愛おしく思えてしかたがなかった。
りんどう、と僕を求めるなきごえも、苦痛を含んだ意味のない母音を吐き出す上擦った声も、だらしなく全てをさらけ出したからだも、赤と白の親友たちも、それを玩具にしているそいつも、悲惨なせかいも。全部、愛おしかった。
 勘違いされては困る。僕はそいつを恨んでいる。殺してやりたいくらい憎んでいる。
けど、感謝もしている。
だって、そいつは

はきけをもよおすくらいうつくしいせかいをぼくにおしえてくれたのだから