ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 世界と一緒。 ( No.100 )
日時: 2012/03/29 08:37
名前: 緑川祐 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)

【とある夏の、とある思い出 3】

「なぁ、に……?これ……」
 小屋の中を見て、言葉を失った。何を言えばいいのかわからなくて、口をただみっともなくパクパクさせることしかできなくて。
 床の至るところに散らばった、白い液体と小さなしろい体。一番近くにあったそれは“ゆくえふめい”になっていた、同じクラスの女の子。ぐったりと目を閉じて、まるで
「奥を見てごらん」
 不吉なことを考えかけたとき、亜蝉さんの声で思考が遮られた。タイミングが良かったと思う。よけいなことを考えなくて済んだ。
 亜蝉さんに促されて奥を見て……息を飲んだ。
 まっしろなからだ。その中でも、いやに目立つピンク色が二つ。滑らかな手足は、何のためか縛られている。瞳は、黒い布で隠されていて見えない。異常な、その光景。
 そこにいたのが、別の女の子だったらもう少し冷静でいられたのかもしれない。けれど、そこにいたのは……紛れもなく、世界だ。しっかりとした確証があるわけじゃない。だけど、あれは
「ほら、竜胆君。綺麗だろ?」
 亜蝉さんの毛深い浅黒い手が、しろいからだを撫でた。びくりと肩を震わせたその子の瞳を覆う布を、亜蝉さんは笑いながら外した。