ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 世界と一緒。 ( No.104 )
日時: 2012/04/14 15:07
名前: 緑川祐 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)
参照: 一気に更新しちゃいますね。

【守るべきもの】

 ああ、そうだ。僕が守らなくちゃいけないんだ。あの子を。
 僕の大切な世界を。

「死ねないよ、まだ」

 かすれた声で呟いて僕は、目の前で力を緩め始めた亜蝉を笑った。
 もう一度、手に力をこめようとした亜蝉の腹に、ナイフを突き立てる。数年前に、神代にも突き刺したナイフだ。

「ぼくは、まだしねないんだよ、あぜみ」

 酸素が足りず、ぼんやりとした頭をフル回転させて、言葉をつむいでいく。

「お前や神代が何度来ようが、僕は世界を守る。あれは、“俺”のものだよ」
「あぁ、今はそれでいい。仕方がない」

 僕の言葉に、笑う亜蝉の声。言葉。僕は、眉を寄せた。

「でも、きっとアイツは君を殺すよ。そうなるようになっているんだ。愛しい娘は、私を覚えていてくれたよ」

 亜蝉は、言葉を続ける。
 意味は、理解できている。聞きたくもない。

「うるさい。黙れよ」
「あぁ、いいさ。私が黙ったところで、未来が変わるわけではないがな」

 どこか満足そうに笑う亜蝉を睨みつける。なにが、未来だ。
 亜蝉の腹部を、強く蹴る。いらいらする。

「せいぜい、もがいててよ」

 誰に言ったのかわからない言葉を残して、僕はホテルを後にした。