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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 世界と一緒。 ( No.15 )
- 日時: 2011/12/07 05:56
- 名前: 結城柵 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)
- 参照: 前回と今回のタイトルは乙一さんインスパイア。
【夏と僕とあの人の死体 2】
「…大丈夫。心配しないで、世界は僕が守るから。だから、貴方はそこでゆっくりしてて?」
こぼれた白い粒が、僕には涙に見えた。きっとこの人が心配して涙をながすこと、世界のことぐらい。
だから、大丈夫と笑みかけた。この人にも、泣いてほしくなんかないから。
それにしても、ひどい匂い。
腐敗臭とでもいうのかな、不快なにおいには間違いないけれど。
返事もない、原型もとどめていない。訪問者の蠅は我が物顔で腕の上を占領している。
あの頃の面影が、全く残っていないことに、少しだけ悲しくなる。
“自分でやったくせに”と嘲笑する声が聞こえた気がした。
「じゃあ、世界が呼んでるから、もう行くね。またね…優香おばさん」
さっきから止まない携帯のバイブに、少しだけ頬が緩む。相手は、世界だって知ってるから。
僕はおばさんに軽く手を振ると、来た道を引き返した。
ひどく、セミの声が騒がしかった。
なんとなく悲しくて、なんとなく嬉しかった。
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