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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 世界と一緒。 ( No.22 )
- 日時: 2011/12/12 08:45
- 名前: 結城柵 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)
- 参照: 久々の更新。待たせたね、お嬢さん方!あ、待ってない?
【逃げる】
痛い。呼吸が辛い。意識がもうろうとする。
「ぅー…りんどー…?」
「…ん?世界、ただいま。起こしちゃった?」
世界の声が、意識をこの世界につなぎ止める。階段を降りてきた世界の腕には、僕のあげたぬいぐるみが抱かれていて、頬が緩んだ。
世界に感付かれないように、そのまま笑って世界を見る。ぼんやりと焦点の定まらない世界の視線が、僕の腕のあたりで止まった。
しまった、と思って隠そうとしたときにはすでに遅く、世界の表情はみるみるうちに泣きそうに歪む。
「大丈夫、転んだだけだよ」
世界が何か言う前に、先手を打って言う。腕を回してみせる。痛みを殺して、笑う。世界に心配はかけられない。
「…ほんとに?」
「うん」
それでもまだ、不安そうな世界の頭を撫でる。
ほっとした表情になった世界は、おやすみ、と自分の部屋に戻っていく。ほっとしたのは僕も同じ。世界が単純でよかった。
べたついて気持ち悪い服を脱ぐと、床にナイフが音をたて落ちた。服を洗濯機に突っ込み、慌てて拾い上げる。床に傷はついていないみたい。
ふと、ナイフに目をやる。
その銀色の刃に付いているのは、僕のものではない血液。
鋭くまた、腕が痛んだ。
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