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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 悲哀と世界。 ( No.5 )
- 日時: 2011/11/27 08:32
- 名前: 結城柵 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)
【世界を救う勇者だなんて】
次の日朝。
鈍く痛んだ左腕に目を覚ました。
今日は雨みたいだ。
カーテンを開けた厚い窓ガラスの向こうに見える灰色の空と、赤、青、緑とカラフルな傘の群れに笑みをこぼす。
さてと、お腹が減った。
「おは…よ…」
リビングでトーストをかじっていると、世界が目を擦りながら起きてきた。あーあ、腫れるぞ。
…世界は夕べのことに触れない。僕も何も言わない。
「せっかくの土曜日なのにね」
僕は呟きながら、世界を見て目を見開く。
「…どうしたの?」
静かに涙を流す世界に問いかける。
はっ、と荒い息を僕が吐き出す。
「こわいゆめ、みたの。みんないなくなっちゃって、せかいとりんど、ふたりだけで。
こわいひとにね、つかまっちゃうの。こわれちゃうの」
こわいよ、と小さく呟いた世界を抱きしめる。
甘い香りと華奢な体と小さな泣き声に、体が心が熱くなるのを感じた。
おさえろ、我慢しろ、僕。
「大丈夫だよ、世界、安心して。僕が世界を守るから」
勇者みたいじゃない?と笑ってみせれば、世界も明るく笑う。
…守るのは、守ったのは、
僕の 僕だけの セカイ
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