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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 世界と一緒。 ( No.57 )
- 日時: 2012/01/06 21:37
- 名前: 結城柵 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)
- 参照: コメ返しはまた後で。&雑談コメは控えてください。
【自分だけどこか取り残された】
携帯の着信音で目が覚めた。今は、何時くらいなんだろう?
ぼんやりと、覚醒しきらない意識の中で携帯のディスプレイを見る。そこに表示された『竜胆』の文字に、一気に眠気が吹っ飛んだ。
「はい?」
『あ、世界?…起こしたかな?』
竜胆の声に、ほっとして頬が緩んだ。あぁ、やっぱり私は竜胆が好きだ。
「ううん、起きてたよ。どうしたの?」
『…ん、今日、少し遅くなるかもしれない』
『虚木?もういいかー?』
竜胆の声、それに重なった彼を呼ぶ声に、胸がちくりと痛んだ。
…あれって、終里ちゃんの、声だよね?
『ん、今行く。…じゃあ世界、また、あとでね』
一方的に、ぷつりと切れた通話。暗い部屋に響くのは、ツー、ツー、と通話の切れた時になる、独特の機械音と私の吐息。
ぎゅう、と布団を抱き寄せる。胸の奥がずきずきと痛む。
竜胆は、終里ちゃん、そしてきっと始裡くんと…、どこに行くんだろう?何をしに行くんだろう?
私を、置いて、どこに行くの?
じわりと、視界が滲んだ。
ああ、いつも傍にいるなんて、私の、都合の良い妄想だったんだ。
竜胆が、世界から、離れていった。
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