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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 世界と一緒。 ( No.63 )
- 日時: 2012/01/14 11:09
- 名前: 結城柵 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)
【ともだち】
「最初はグー、じゃんけんぽいっ!」
やたらとはしゃいだ星野の声が反響する。完全防音なので、被害を受けるのは僕と刻野だけだ。カラオケに来ているというのに、誰一人として、歌っていない。
何なんだ、と小さくため息を吐きながら、星野の手元を見る。あ、チョキ。また負けた。
「これで私の10勝だね」
にんまりと、いつもの猫のような笑みを浮かべた星野に、なんと声をかけるべきかわからなかった。まぁ、無難に、じゃんけん強いな、で良かったとは思うけど。
向かい側に座った星野から視線をずらし、横に座った刻野を見る。普段の、猫耳パーカーのフードを脱ぎ、髪を晒してる刻野はなんとなく新鮮だった。
ふわふわとした灰がかった黒髪が、すごく刻野に似合う。なんて見つめる僕を大して気にする様子もなく、刻野はもくもくとポテトを食べている。
夕方、五時過ぎ。カラオケボックスに3人。しかも誰も歌おうとしない。…どうして、こうなった?
「ね、虚木。楽しい?」
星野が、穏やかに笑いながら、首を傾げた。
…ああ、僕の、ためだったんだ。
どう考えたって、余計なお世話なんだけど、心配してくれてたんだと思うとなんだかとても、嬉しかった。
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