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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 世界と一緒。 ( No.79 )
- 日時: 2012/02/06 09:29
- 名前: 結城柵 ◆ewkY4YXY66 (ID: vGq5J7E8)
【神様は代理人に甘い 神代視点】
彼が、俺をチラ見してから、帰っていったのを見て、あぁ、俺も帰らなきゃと思った。
でも、あんな華奢な体のどこからあんな力が出てくるのか、容赦なく殴りつけられた体を動かすのは億劫でならない。
雨が傷口に染みる。いくら夏とはいっても、寒くないわけではない。なんだか、笑けてきた。
俺の言葉一言一言に、不快そうに眉をよせる彼を思い出して、くつくつと笑う。俺はよほど、彼に嫌われてるみたいだ。
別に、彼に嫌われたって、どうとも思わないけれど。だって、一応ライバルなわけだし。
ずくり、と傷が痛んだ。血が流れていないのは、救いだったのだろうか?
こんなときにも、人間の思考回路って、意外と暢気なもんなんだなぁ、と苦笑がもれてしまう。
ざり、と足音がして、視界に綺麗に磨かれた黒い靴が見えた。誰の足、だろうか?
「きみ、大丈夫…か?」
聞き覚えのある声。誰だったか、なんて思い出すことは、簡単だった。
黒い靴は、よく磨かれた革靴だと理解した。雨に降られて災難だなぁ、と同情。
「いや…大丈夫じゃないです…。彼に結構やられてまして」
俺の一言に、その人は頷いて、俺を軽々と抱き上げた。
正直なところ、俺だって普通の高校生だ。めちゃくちゃ恥ずかしい。
「『亜蝉さん』!下ろしてくださいよ!」
俺の叫びに、彼は柔らかくほほ笑むだけだった。
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