ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 世界と一緒。 ( No.88 )
日時: 2012/02/23 18:01
名前: 結城柵 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)

【あの人 2】

「自分の家に来て、何が悪いんだい?」
 苦笑しながら亜蝉が言う。自分の家、か。笑わせてくれるなぁ。捨てて逃げたくせに。
「悪いに決まってるでしょ、ここはあなたの家じゃないんだから」
 亜蝉を睨んだまま言う。高そうなスーツに身を包み、髪を後ろに撫で付けた仕事姿の亜蝉は、見た目より若く見える。
そんな亜蝉を嘲笑するように、僕は口元を歪めた。あぁ、今もまだ若い汁を啜って生きているんだねぇ、貴方は。
「で、用件は何」
「あぁ、安心してくれ。今日は世界に会いに来たんじゃないさ。用があるのは、君だよ、竜胆君」
 僕の突っ慳貪な言葉に、亜蝉はふんわりと笑いながら言う。
意外な返答に、眉を寄せた。世界に用がない…本当か?僕に用って、何の用だ?…殺しにでも来たか?
警戒心を露わにして亜蝉を見つめる。嫌な予感しかしない。そんな僕とは違い、亜蝉は灰色の空を見つめている。
「場所を移そうか」
 亜蝉が僕に視線を移して言う。
ついていくべきではないんだろうけど、ここで逃げるわけにもいかない。
心の中で世界に謝る。
もし、帰ってこれなかったら、ごめん。