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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 悲哀と世界。 ( No.9 )
- 日時: 2011/12/01 17:59
- 名前: 結城柵 (ID: khvYzXY.)
- 参照: トリめんどいの。
【父親】
喫茶店で、親子ほど年の離れた男二人が向かい合って座っている不思議な光景に、僕は思わず小さく笑う。
おじさんは気まずそうに視線を泳がせる。
「さて。十年ぶりですかね?何のために、いつ、こっちに戻ってきたんです?」
なるべくにこやかに話す。
内心では何も考えていないけど。ほんと、驚くくらい空っぽ。
おじさんは、諦めたようにため息を吐いて口を開いた。
「本当に久しぶりだね、竜胆君。元気だったかい?」
「はい、お陰様で」
僕の返答に、おじさんは少し頬を引きつらせただけだった。
大人のスルースキルって凄い。
「こっちには、たまたま仕事できたんだ。…もうすぐ世界の誕生日だな。どうだ、世界は元気か?」
世界にプレゼントを買うために、あの店にいたんだな。なるほど。
少し疑問に思ってたことが解消された。わーい。
けど。僕はこの人に容赦はしない。
「捨てた娘の心配ですか?世界はね、あの日のことも、貴方のことも忘れて、僕と二人で穏やかに暮らしてますよ。そうそう。おばさんなら、去年病気で亡くなられましたよ」
嘘だ。おばさんは病気でなんて亡くなっていない。
けど、この人に真実を教える必要なんてない。
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