ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 世界と一緒。 ( No.91 )
- 日時: 2012/03/19 21:01
- 名前: 緑川祐 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)
【意外と、世の中は狭い 2】
思わず漏れた笑い声に、亜蝉は怪訝そうな表情をうかべて僕を見る。明らかにおかしいから、止めなくちゃいけないんだけど、とまらない。おかしくておかしくて、たまらない。思考が追いついてくると、余計に笑えてきてしまう。
「くくっ……、あはははっ!!何なんだよ!神代が世界の従兄弟だぁ?笑わせてくれんな。お前ら一族は、世界に寄せ付けられる遺伝子でも持ってんの?発情すんなら、遺伝子的に安全なそこらの女にでも発情してろよ!」
亜蝉は父親。神代は従兄弟。身内にばかり狙われていると思うと、なんだかおかしくてたまらなかった。怒りを抱いても、気色悪いと思っても、おかしくないはずなのに。僕にはおかしくてたまらなかった。なに?世界はなんか身内から狙われる特殊なオーラでもだしてんの?
「っくく、あー、お腹痛い。はぁ、すいません。話はそれだけじゃないんでしょ?続けてよ」
涙を拭きながら、ぽかんとしている亜蝉に、話を続けるように促す。そうすると亜蝉は、少し眉間に皺を寄せてうなずいた。ふけるよ。あぁ、もう、面白い。面白いなぁ、変な人たち。僕も、人のこと言えないけどさぁ。
ケタケタと笑いながら、渋い顔をしている亜蝉を見つめていると、ぐるん、と世界が反転した。天井が見える。ぱちくり。そんな効果音が似合いそうなほど、困惑して瞬きをする僕。そんな僕に馬乗りになっている亜蝉の顔に、ぞっとした。なんの表情もうかんでいやしない。能面のような、無表情。
「あぜ……」
どういうことだ、と問い詰めようとしたとき、首に圧迫感。思い切り、首を絞めてくる亜蝉。もちろん、能面のまま。思っていたよりも強い力。ぎりぎりと、喉に食い込む指。
「ざけん……な、」
情けなくも、かすれる声。亜蝉は、それに、少しだけ、笑った。
その笑顔に、あぁ、死ぬんだなぁって、わかっちゃった。
ごめんね、世界。帰れないや。